失神の中には明瞭な器質的心疾患を有さず,電気的異常からの心室性不整脈が原因である例がある
心電図異常をとらえることが重要であり,繰り返し心電図を記録し,運動負荷心電図,薬物負荷心電図などを行う
家族歴,内服歴,失神の状況などを詳細に問診する
失神を生じる不整脈は,徐脈性不整脈,頻脈性不整脈に大別される。その中で,致死的ともなる心室細動/心室頻拍の多くは器質的心疾患例にみられるが,明瞭な器質的病変を有さない例に生じることもある。それらの疾患群(表1)では,特徴的な心電図波形に加え,発症様式,家族歴や内服歴の情報などが重要であり,詳細な問診も必要となる。一方,健常者の心電図においても認められることが少なくないsaddle-back型Brugada心電図やJ波も,失神の原因となる病態として注目されてきているが,その扱い方にまだ一定した見解はない。本稿では,日常診療でみられることが多いQT延長症候群(long QT syndrome:LQTS),Brugada症候群,J波症候群を中心に概説する。
LQTSは,心電図上QT間隔の延長を認め,torsades de pointes(TdP)と称される多形性心室頻拍を発症し,失神や突然死の原因となる症候群である。QT延長は再分極時間の延長を反映しており,Kチャネルの機能低下により生じることが多い。先天性と後天性があり,後者は低K血症など電解質異常や薬物(Kチャネル遮断作用を有する抗不整脈薬など)によって引き起こされる。先天性では13の遺伝子型がある。女性に多く,約8割の患者が20歳以前に初回発作を経験する。診断にはSchwartzの診断基準である,①心電図所見(QT時間,TdP,交代性T波,notch T波,徐脈),②臨床症状(失神,先天性聾),③家族歴などの評価を行う1)。LQT 1~3の心電図の特徴と発症様式を図1 2)に示す。運動や突然の音刺激で誘発されるなどの特徴があり,詳細な問診も重要である。
QT延長やT波の異常波形が記録されれば診断に至る。心電図異常が不明瞭な失神・心肺停止蘇生例では,運動負荷心電図や,エピネフリン負荷心電図を施行することにより,QT延長やその形態異常が明らかになることがあるため有用である。
β遮断薬が最も多く使用され,そのほか,K製剤,Naチャネル遮断薬,Ca拮抗薬などが用いられる。心室細動,心肺停止蘇生例では植込み型除細動器(implantable cardioverter difibrillator:ICD)も考慮される。
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