妊娠中の糖代謝異常に,①妊娠糖尿病(GDM),②妊娠中の明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy),③糖尿病合併妊娠(pregestational diabetes mellitus)がある
診断基準変更により,約10%の妊婦が何らかの糖代謝異常を合併する時代になった
糖代謝異常合併妊娠の管理目標には,①今回の妊娠中の母児の合併症予防,②GDM,妊娠中の明らかな糖尿病母体が将来,糖尿病,メタボリックシンドロームを発症するのを予防,③糖代謝異常を合併している妊婦の児が将来,糖尿病,メタボリックシンドロームを発症するのを予防,がある
上記目的を達成するためには,妊娠前,妊娠中,産後を通じた一貫管理が重要である
糖代謝異常合併妊娠では母児に表1に示すような合併症が起こり,その予防は重要である。奇形については,妊娠してからの対応では既に器官形成期を過ぎているため回避できない。したがって,妊娠を計画している女性,特に糖尿病家族歴,肥満,巨大児出産既往,35歳以上といったリスクファクターを持っている場合は,妊娠前に耐糖能異常の有無をスクリーニングしておく必要がある。そして,妊娠前に糖尿病が発見された場合には,表2に示す妊娠許可基準に達するように治療し,計画妊娠することが重要である1)2)。
妊娠前の血糖コントロールでは,経口糖尿病薬,糖尿病腎症に対するACE阻害薬の使用も可能であるが,妊娠を希望する場合は胎盤通過性のないインスリンに変更する。インスリンの種類にも考慮が必要で,持効型インスリンのインスリン グラルギンについてはその安全性が確認されていない。このため,妊娠を希望する女性に対しては,妊娠前に他の安全なインスリンに変更して血糖コントロールを安定させる必要がある。また,ACE阻害薬を使用している場合は中止する1)2)。
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