治癒切除不能stage Ⅳ胃癌に対する外科治療には,腫瘍量を減らすことで予後の延長をめざす減量手術と,症状の改善を主目的とした緩和手術がある
減量胃切除術の意義が日韓共同の前向き第Ⅲ相臨床試験(REGATTA試験)により明らかにされた。プライマリーエンドポイントである全生存期間では,化学療法単独に対する減量胃切除術後に化学療法を行う治療の優越性を示すことはできなかった
減量胃切除に伴う合併症はgrade 2以下のものがほとんどで,手術は安全に施行された。化学療法の毒性は,grade 3以上の白血球減少・食思不振・悪心・低Na血症が減量胃切除群で多かった
この試験の結果から非治癒因子を持つ切除不能stage Ⅳ胃癌に対し減量胃切除術を行うことは否定され,標準治療は化学療法単独であることが確立された
「胃癌治療ガイドライン」1)によると,非治癒胃癌とは「切除不能の因子を有し治癒切術が望めない高度進行胃癌」と定義され,診断技術の進歩した今日でも4%程度存在し,その予後は3年生存割合10%未満と著しく不良である。
非治癒因子(治癒切除を不可能にしうる腫瘍因子)には,他臓器直接浸潤(T4b),肝転移(H1),腹膜播種(P1),腹腔洗浄細胞診陽性(CY1),領域リンパ節以外の遠隔転移(M1)の各因子が挙げられる。これらの因子が治癒切除が望めないほどに拡がりをみせた場合(肝十二指腸靱帯や後腹膜へ広く浸潤した症例,両葉にまたがる多数の肝転移症例,腹腔内全体への腹膜播種症例,16b2にまで及ぶ大動脈周囲リンパ節やVirchowリンパ節・骨などへの遠隔転移症例など)に非治癒胃癌と定義されることに異論はなく,化学療法が第一選択となる。しかしながら,合併切除できるT4b症例や転移個数少数の肝転移症例,播種病変が少数の腹膜転移症例などは,いずれも予後不良ではあるが,一方で遺残のない合併切除ができた場合に長期生存が得られる症例もあり,どこまでを非治癒胃癌と定義するかに明確な答えはない。このように非治癒胃癌の範囲は非常に広く複雑である。