日本動脈硬化学会は2日、高脂血症の治療に用いられるPCSK9阻害薬の適正使用について「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」に準じた声明を発表した。冠動脈疾患リスクが高い家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体患者と冠動脈疾患二次予防の高リスク病態を合併する患者を中心に使用すべきとしている。
PCSK9阻害薬はスタチンとの併用により、強力なLDLコレステロール低下効果がある。また、非FHの一次予防患者も保険適用が認められている。その一方で、薬価が高額だ。同学会はこれを問題視。声明で「冠動脈疾患発症リスクが高いFHヘテロ接合体患者と冠動脈疾患二次予防の高リスク病態を合併する患者を中心に使用されるべき」との考え方を示した。
具体的にFHについて、冠動脈疾患二次予防ではまずは積極的にLDLコレステロール70mg/dL未満達成を目指すことを求めている。その上で、「スタチン最大耐用量にエゼチミブ併用で管理不十分であれば、同薬の併用を積極的に考慮する」と明記。「LDLコレステロール低下効果判定は処方変更後1~2カ月で行い、同薬を開始するときには専門医に相談することが望ましい」としている。
また、非FHの冠動脈疾患二次予防について、「急性冠症候群かつ/または糖尿病+他の高リスク病態合併」ではLDLコレステロール70mg/dL未満達成を考慮する」必要性があるとしている。「(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版)エゼチミブ併用かつスタチン最大耐用量で、LDLコレステロールが管理目標値に達しない場合は同薬の投与を考慮すると同時にあらためて家族性高コレステロール血症を疑う必要がある」と指摘。高血圧・糖尿病・喫煙など古典的危険因子の十分なコントロールが重要だとし、同薬の開始時は専門医に相談することが望ましいとしている。
声明では今後の課題として、①冠動脈疾患以外の高リスクな動脈硬化性疾患における使用、②スタチン不耐への使用、③PCSK阻害薬の使用を考慮すべき基準値の策定―などを列挙。①については、海外の大規模臨床試験で、スタチンに上乗せした同薬の併用投与が、非心原性脳梗塞や末梢動脈疾患を合併した患者でも心血管イベント抑制効果が報告されていることから、症候性脳血管障害(アテローム血栓性脳こうそく)や末梢動脈疾患などにも推奨すべきかどうか検討が必要だとしている。