政府は9日、罰則付き受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案を閣議決定した。望まない受動喫煙を防止することが改正の目的。法案は今国会に提出される予定。
法案では、診療所、病院、学校、児童福祉施設等の患者や子どもが主に利用する施設や、行政機関、バス・タクシー、航空機は「敷地内禁煙」とする。ただし、屋外で受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所に限り、喫煙場所の設置を認める。敷地内禁煙の対象は、法成立後に政令で定める。
それ以外の多数の人が利用する施設や飲食店は「原則屋内禁煙(飲食等不可の喫煙専用室内でのみ喫煙可)」とする。
加熱式たばこについては、煙に有害物質が含まれていることは科学的に明らかである一方、受動喫煙による健康影響が明らかでないため、規制の対象としつつ、当分の間、飲食等が可能な喫煙室での喫煙を認める。
喫煙可能場所のある施設に対しては、従業員を含む20歳未満の人の喫煙場所への立ち入りを禁止するほか、従業員の募集を行う際、どのような受動喫煙対策を講じているかについて明示する義務を課す。
既存の飲食店に対する経過措置も設ける。個人や中小企業が運営する客席面積100平方メートル以下の店舗では、直ちに喫煙専用室等の設置を求めることが事業継続に影響を与えることが考えられることから、喫煙可能な場所に関する標識を掲示すれば、客席での喫煙を認める。
厚労省の推計では、経過措置の対象となる飲食店は現在、全飲食店のうち最大5.5割程度に上る。ただ、飲食店のうち、新たに出店した店舗は2年間で全体の約2割弱、5年間で約3割強になることから、厚労省は経過措置の対象となる店舗は今後段階的に減少すると見込む。
改正法は2020年7月の東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行。喫煙専用室をつくる必要がない医療機関や行政機関では2019年夏頃から施行し、全面施行は20年4月からとする。
政府は9日、第3期がん対策推進基本計画の変更も閣議決定した。健康増進法改正案を踏まえ、受動喫煙に関する個別目標として「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策を徹底し、本基本計画の計画期間中において、望まない受動喫煙のない社会をできるだけ早期に実現することを目標とする」を新たに盛り込んだ。
基本計画について議論していた厚生労働省のがん対策推進協議会は昨年6月、受動喫煙に関する個別目標について「2020年度までに職場、家庭、飲食店など全ての場所で0%を目指す」ことで一致したものの、健康増進法改正案に関する厚労省と与党との調整が難航し、個別目標がこれまで定まっていなかった。