尿路感染症は,日常的な急性疾患である。とりわけ高齢になり,日常生活動作が制限されるようになると,男女を問わず発症するようになる。
高齢者では無症候性細菌尿も少なくないため,過剰に抗菌薬が投与されがちな疾患とも言える。在宅現場で活用できる医療資源は限られているが,その中で適切に診断して治療へと繋げなければならない。また,在宅における治療では,診療チームをつくることから手掛ける必要がある。家族のケア力を見抜き,必要に応じて訪問看護を導入する。あるいは,ダメだと思ったときの病院への搬送方針について合意しておくことも重要だ。そして,そもそも尿路感染症のハイリスクグループとも言える在宅患者について,再発を予防するための,日常生活全般にわたる包括的な工夫とサポートも求められる。
本特集は,こうした観点から,診療所や病院,あるいは都市,農村,島嶼地域と様々な環境で在宅医療に取り組んでいる3人の共同で執筆した。それでも,在宅現場の多様性に追いつくものではないが,限られた医療資源の中で苦闘されている読者の皆様にとって,診療の一助となれば幸いである。
1 在宅における尿路感染症の診断とピットフォール
高山義浩(沖縄県立中部病院感染症内科,地域ケア科医長)
佐々木 淳,小松裕和
2 在宅における尿路感染症の治療と訪問看護との連携
小松裕和(JA長野厚生連佐久総合病院地域医療部副部長,地域ケア科医長)
佐々木 淳,高山義浩
3 在宅で心がけたい尿路感染症の予防と感染対策
佐々木 淳(医療法人社団悠翔会理事長,診療部長)
高山義浩,小松裕和