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大腸癌の内視鏡治療【適応は早期がんに限られるが,最も低侵襲な治療法】

No.4910 (2018年06月02日発行) P.49

冨木裕一 (順天堂大学下部消化管外科先任准教授)

坂本一博 (順天堂大学下部消化管外科教授)

登録日: 2018-06-01

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大腸癌に対する内視鏡治療の適応は早期がんに限られるが,最も低侵襲な治療法である。早期大腸癌は粘膜癌(M癌)と粘膜下層癌(SM癌)に分類され,M癌はリンパ節転移や遠隔転移のリスクはない。したがって,M癌は外科的手術ではなく,内視鏡的治療が望ましいが,通常の内視鏡的治療が困難な病変は,腺腫やM癌であっても外科的手術になることがある。また,一括切除ができない病変に対する分割切除は,遺残再発が起こりやすいことが指摘されている。これらの問題に対し,大腸粘膜下層剝離術(ESD)は,従来のスネアによる方法では切除できない大きな病変でも一括切除することができる有効な治療法であり,わが国では2012年から保険診療が認められ,その需要は拡大している1)

一方,SM癌は約10%のリンパ節転移がみられるため,リンパ節郭清を伴う腸管切除が原則である。リンパ節転移のリスクファクターには粘膜下層深部浸潤,組織型,脈管侵襲,簇出があり,内視鏡治療後の病理組織学的診断で,リスクファクターを1つでも認めた場合は,追加腸切除術を考慮することが推奨されている。リンパ節転移リスクが低いと判断されれば,追加手術を行わずに経過観察となる。最近はSM癌に対しても,内視鏡的粘膜切除術に加え,積極的にESDが行われるようになっている。大きな病変であっても摘除生検(total excisional biopsy)を行い,正確な病理組織学的診断のもと追加腸切除をすべきかを検討する治療方針は,今後増えていくと思われる。

【文献】

1) Tanaka S, et al:Dig Endosc. 2015;27(4):417-34.

【解説】

冨木裕一*1,坂本一博*2  *1順天堂大学下部消化管外科先任准教授 *2同教授

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