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jmedmook38 あなたも名医!どう診る?! 診療所で出会う救急患者 ゼッタイに押さえておきたい救急対応のノウハウ

救急患者に困る前にこの一冊!

定価:3,850円
(本体3,500円+税)

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編集: 今 明秀(八戸市立市民病院救命救急センター所長)
判型: B5判
頁数: 228頁
装丁: カラー
発行日: 2015年06月25日
ISBN: 978-4-7849-6438-3
付録: -

診療所や小規模病院に、普段診なれていない救急患者が来院!さあ、どうする?「ショックなのにラインがとれない」「痙攣が止まらない」等々の困りどころを取り上げ、どう対応すればよいかをしっかり具体的に伝授。さらに絶対に押さえておきたい「比較的高頻度に出会う疾患」や「頻度は低いけれど知っておきたい緊急性の高い救急疾患」への救急対応(予防・処置)について、シーン別にわかりやすく解説。高次医療機関への転送判断基準や、転送の前にしておくべき準備などにも言及しています。絶対に手元に置いておきたい1冊です!

診療科: 救命救急 救命救急
シリーズ: jmedmook

目次

第1章 緊急転送の前に─こんなとき,どうする?
01 救急疾患の予防
02 気道異物窒息で危機的
03 換気不能+気管挿管失敗
04 ショックなのにラインがとれない
05 痙攣が止まらない
06 酸素マスクでもSpO2が上がらない
07 ドクターヘリを呼ぶべきか? 救急車搬送か?
第2章 すぐ行うべき緊急処置はこれだ!
08 縮瞳する意識障害(有機リン中毒)
09 緑色の吐物,草の匂い(パラコート中毒)
10 風邪薬過量服薬
11 なんとなく変な熱中症
12 低体温症
13 低血糖(SU薬などによる)
第3章 転送の根拠を明確に!
14 冷や汗+胸痛
15 腹痛を訴える妊娠反応(+/−)女性の転送
16 マムシ,ハブ咬傷
17 外傷転送
18 めまい転送の判断
第4章 意識がおかしい!
19 意識障害の鑑別─アイウエオチップス
20 よくある迷走神経反射失神
21 よくある目撃のない痙攣
22 よくあるアルコール関連
第5章 失敗しないために知っておこう!
23 破傷風予防の原則
24 心内膜炎を見逃さないために
25 大動脈解離を見逃さないために
26 頻呼吸のグラム陰性菌敗血症
27 浮腫から甲状腺機能低下

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序文

巻頭言€

もう30年も前,私は人口4,000人ほどの村の診療所で一人所長をしていた。高齢者の慢性疾患と小児の感染症外来に加えて,ときどき救急搬送されてくる患者も診た。そんな救急患者を受け入れた当時のことを思い返せば,苦い思い出ばかり。€
・家族の車で運ばれてきた意識障害患者の鑑別ができずに,何科に転送すればよいかわからなかった…。€
・息切れで受診した糖尿病患者が帰宅後,すぐに救急車で総合病院へ運ばれて,実は心筋梗塞だった…。€
・めまいで受診した患者にメイロンを注射し帰宅させようとしたら待合室で倒れて,下血が見つかった…。€
・マムシに咬まれて受診した患者に対し,どうなったら転送して抗毒素を使うか知らなかった…。€
・低血糖にブドウ糖を注射し帰宅させた患者が,数時間後に再び昏睡状態になり救急車で運ばれてきた…。€
・意識が戻った失神患者を転送するか帰宅させるかあいまいだった…。€
なぜ自分はそんなにも未熟だったのか? それは定型的な救急対応の教育をされたことがなかったからだ。当時の医学書には疾患名からの記述が多く,現在の救急関連の教科書やマニュアルのように症候から記述・解説している書籍は国内にほとんどなかった。€
今, 私は, 地方都市(人口約236,000人)の八戸市立市民病院救命救急センターで若い医師の教育を受け持っている。八戸ERは一次救急から三次救急までを扱い, 年間約24,000人が利用する。救命救急センターと救命病棟では,常時100床の入院を受け持つ。診療所からの転送を断ることはないし,それどころか,ドクターヘリやドクターカーで診療所の診察室まで迎えに行く。我々は診療所に診断精度は求めない。それより治療開始の遅れが怖い。緊急処置をしてくれれば,さらにうれしい。€
本書には,診療所で出会う救急患者に対する,押さえておきたい救急対応のノウハウを記載した。我々は診療所から救急で転送されてきた患者を救急医として診療した経験を豊富に持つ。その経験と欧米の文献をもとに,診療所医師が救急で転送する前に行うべき処置,転送する根拠,診療所医師が転送先に迷う意識障害のいろいろ,診療所医師が陥りやすい落とし穴などについて救急医の目線で書いた。€
目の前の症例で迷ったら,本書の目次から選んでページをめくってほしい。きっと役立つと思う。30年前に本書があったら,私は飛びついて買っていたに違いない。

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正誤情報

下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。

・ 『jmedmook38号 あなたも名医!どう診る?!診療所で出会う救急患者』:補足説明

『jmedmook38号 あなたも名医!どう診る?!診療所で出会う救急患者』の「08 緑色の吐物,草の匂い(パラコート中毒)」に関してのご質問を頂きました。
編者(八戸市立市民病院救命救急センター所長 今 明秀)より、この場をお借りして回答および補足をさせて頂きます。
 
【補足】
パラコート製剤は日本の農業にとって欠かすことができない大事な除草剤です。しかし、その誤使用により中毒になる患者が後を絶ちません。地方で多いパラコート製剤中毒に対する処置法を知ることは、診療所医師にとって大変重要です。そこで、本論文では診療所医師がパラコート製剤による中毒に対応するポイントを解説しました。
なお、表題の「パラコート中毒」ですが、純粋な薬物としての「パラコート」による中毒、という意味ではなく、「パラコートを含む製剤による中毒」の意味です。市販のパラコート製剤を誤用した場合の中毒症状は、パラコートそのものの毒作用に加え、界面活性剤や吐剤などの添加剤による症状もあることが知られています。しかしながら、診療所でパラコートを含む製剤による中毒症例の初期診療を行う場合、必ずしもパラコートそのものによる症状と、添加剤による症状を区別する必要はないため、本論文では、このような記載になりましたことをご了解いただければ幸いです。
また、本論文中で、吐物の色が緑色であることを強調していますが、パラコートそのものは白色の結晶で、緑色は添加された着色剤の色であり、過去に販売されたパラコート製剤では着色されていないものもあるため、パラコート製剤中毒の症例のすべてにおいて吐物が緑色、というわけではありません。しかしながら、現在市販されているパラコート製剤はすべて緑色に着色されているため、「農薬を服用した可能性がある患者の吐物が緑色である」ことが、パラコート中毒を疑うきっかけにはなり得ると思います。
 
【質問1】
二次中毒予防の必要性についてですが、パラコートに揮発性はなく、誤飲や意図的に服用した患者の呼気や吐しゃ物が臭うのは、特有の臭気性物質を添加してあるからです。このことでも、意図的な服用を阻止しようとしています。したがいまして、特に特殊な汚染予防は必要ないと思うのですが、敢えて重装備を求めることで、胃洗浄などの医療処置が遅れてしまい、救命できなかったというリスクはないのでしょうか。何事にも予防策は必要ですが、パラコートだから特にこうすべき、ということではないような気がします。
 
【回答】
ご質問ありがとうございます。「手袋・マスク・ゴーグルなど医療者自身の汚染予防」は、嘔吐を含む、患者さんの体液に接する可能性がある医療従事者が行うべき「標準予防策」として救急医療領域では当然の処置であり、パラコート製剤中毒を疑う患者に接する際に限ったことではありませんので、汚染予防をしたからといって治療開始が遅れるものではありません。
純品のパラコートは結晶であり、そのままでは皮膚から吸収されることはありません。
しかし、『中毒百科―事例・病態・治療 改訂第2版』(内藤裕史著、南江堂、2001年発行)にもあるように、パラコート製剤に含有される界面活性剤や吐剤などが皮膚の炎症を起こして、そこから毒成分としてのパラコートが吸収される可能性はあります。どの製剤がどの程度皮膚損傷を起こすという文献はありませんが、高濃度のパラコート製剤への接触や、長時間の接触で経皮的に中毒を起こすことは、『中毒百科 改訂第2版』を含め、多数の成書に記載してあります。

【質問2】
鵜飼 卓らによる「中毒に対する吸着型血液浄化法」〔ICUとCCU  6(12):1015〜1024,1982〕によれば、パラコート中毒に関して8時間以内の処置は効果が高いとの報告もあるようです。「予後を改善するというエビデンスはない」という記述と上記論文との関連をご教示頂けないでしょうか。
 
【回答】
以前から、パラコート製剤による中毒に対して血液浄化法の効果があったという報告は散発的になされていますが、このような症例を集積し解析すると、「パラコート製剤による中毒に対し血液浄化法が予後を改善するとはいえない」というのが、現時点での世界的なコンセンサスです。パラコート製剤による中毒の場合、過去の症例の積み重ねから、パラコートの血中濃度と生存率は密接に関係していることが明らかになっており、血中濃度がわかれば、生存率もある程度予想がつきます。たとえば、パラコートの血中濃度が30%生存曲線上にある患者10人に対して血液浄化法を行い、3人を救命できたとしても、血液浄化法が治療効果をあげたとはいえません。上述の『中毒百科 改訂第2版』の299頁以降には、この事情がつぶさに記載されています。
なお、このような事情から、日本中毒学会の推奨する「標準治療」(『急性中毒標準診療ガイド』、日本中毒学会編、じほう、2008年発行)では、パラコート製剤中毒に対する血液浄化法としては、「血液還流・血液吸着を考慮してもよい」とされています。

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