循環器領域の専門医で構成する横断的組織「これからの心臓病医療を考える会」(座長=橋本信夫神戸市民病院機構理事長、国立循環器病研究センター顧問)は25日に会見を開き、『脳卒中・循環器病対策基本法』制定の必要性を盛り込んだ「医療政策提言2017」を発表した。
提言は、日本脳卒中学会、日本循環器学会および関連19学会が2016年に発表した『脳卒中と循環器病克服5カ年計画』の趣旨を踏まえ、策定したもの。
会見で「これからの心臓病医療を考える会」の小室一成委員(日本循環器学会代表理事)は、「循環器病は、がんと並ぶ2大疾患」と強調。その理由として、①死亡者数が高齢者ではがんと同等で、後期高齢者ではがんを上回るほど多数、②平均寿命と健康寿命の乖離の最大の原因、③総医療費に占める割合が20%―と列挙し、問題提起した。一方で、小室氏によると「どれだけの心不全患者がいるのか、どれほどの治療が行われているか、ガイドラインに沿って治療されているのか、ガイドラインに沿って治療しているところは沿っていないところよりも予後が良いのか、といったデータが全くない中で治療している」のが現状だという。
提言では、心臓病医療の情報収集・提供、体制整備、医療の均てん化や研究の促進などを早期に実現するため、基本法制定の必要性を指摘。基本法は、健康寿命延伸と生活の質の向上を図ることが目標で、総医療費・介護費の抑制にもつながるとしている。
基本法制定を巡っては、14年に参議院で「脳卒中対策基本法」が議員立法として発議されたが、同年の衆議院解散により廃案。昨年には心臓病対策を加えた基本法案が策定されたものの、法案提出には至らなかった。同会では、法案の今国会への提出を目指す方針。