新生児とは異なり,胎児は子宮内というきわめて特殊な環境に隔離されており,胎児の情報をリアルタイムでかつ無侵襲で得ることは,周産期医療の大きな目的であった。
1816年にフランス人医師のRene T. Laennecにより木筒聴診器が開発され「間接聴診法」が可能となった。その後,ドイツ人医師のTraubeにより患者に接する部分が大きく改良され(図1),92年には胴体の部分が木製からゴム管へと改良が加えられた。トラウベ型聴診器はわが国や欧州で広く用いられ,妊娠17~20週以降で一定時間(5~15秒)の胎児心拍数をカウントし,その平均値(回/分)が求められた。
93年,von Winckelによって初めて胎児心拍数の定量的変化が示され1),それ以降,分娩期に胎児心拍数を聴取し胎児のwell-beingを判断することが周産期管理のスタンダードとなった。中島襄吉はその著書の中で「此の聴診は直接に耳を腹壁に当るを以て最良となす。然れども平常直接耳を以てするは不便多きを以て,聴診器を用ゆるものなり。故に本器中最も雑音を生ずべき部分の少なき管状聴診器を宜しとす」と述べている。
しかし,間欠的胎児心拍数聴取では検者間の測定誤差や胎児状態の評価の不確実性のため,胎児徐脈・頻脈・心拍停止の判別しかできないという課題が残った。その後,ME領域での技術革新に伴い,マイクロフォン法,胎児心電図,超音波ドプラ法へと発展し,持続的な胎児心拍の記録が可能になった。