便秘の有病率は若年層で女性に多く,80歳以上で男女比がほぼ1:1となり,年齢とともに増加する
慢性便秘症は他の機能性消化管疾患である胃食道逆流症(GERD),過敏性腸症候群(IBS),機能性ディスペプシア(FD)との併存も多く認められている
慢性便秘症患者のQOLの低下が認められ,社会的労働生産性の低下も報告されている
慢性便秘症の診断は海外ではRome Ⅳ基準が提唱されており,わが国では慢性便秘症診療ガイドラインに基づいて行う
症状,既往歴,警告症状・危険因子などから血液検査,大腸内視鏡検査または注腸X線検査等を施行して,腫瘍性疾患や炎症性疾患を鑑別する
消化管機能検査は大腸通過時間検査,排便造影検査,バルーン排出検査などがあり,慢性便秘症の病態把握に有用である
わが国の便秘の有訴者率は2016年度国民生活基礎調査1)によると2~5%程度と言われ,男性(2.5%)よりも女性(4.6%)に多い傾向を示している。加齢により有病率は増加し,若年層では女性に多く,高齢になるに従い男性の比率が増加し,80歳以上では男女比がほぼ1:1となっている(図1)。さらに,高齢者施設入所者では50%程度の有病率と報告もある。しかしながら,慢性便秘症に限定した疫学調査はわが国では行われていないのが現状である。
一方で,欧米における有病率はおよそ15%程度とされ,男女比は1:2で,わが国と同様に加齢に伴い有病率の増加を認めている2)。慢性便秘症の発症率は,人口1000人につき40人程度と報告され,12年間におよぶ累積発症率は17.4%で,成人における有病率は14%で文献により1.9~40.1%と幅広く報告されている3)~5)。性差においても,男性と女性の有病率の比率は1:2.2と女性に多く,さらに65歳以上ではいきみや硬便が排便回数の減少よりも問題視されている。家族内発症することもあるが,そのメカニズムに関して研究した報告はなく現時点では未解明である。また,非白人,低収入,施設入居者に有病率が高く,一方で,教育年数が長い,社会的・経済的地位の高い人では有病率が低いと報告されている6)。家族歴における検討では,便秘女性の姉妹,娘,母親における有病率はオッズ比で3.8と高率で,慢性便秘症は他の機能性消化管疾患である食道胃逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD),過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS),機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)との併存も多く認められている7)。