No.4735 (2015年01月24日発行) P.34
梁 勝則 (林山クリニック希望の家院長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-15
この反応は,実は質問ではなく心の叫びである。直ちに答える必要はなく,患者に尋ね返す1)。
患者の家族「なぜ私の妻が肺癌に?」
(有効でない)説得的応答「がんは誰がいつなるかわからない病気なのです。たとえ,たばこを吸わなくても」
共感的な応答「奥様が肺癌になられて,非常にお辛いこととお察しいたします」
開かれた質問「奥様が肺癌になられたことについて,どう感じているのかをお話し頂いてもよろしいですか?」
この質問の背景にあるのは,症状の悪化や死に対する深い心配・恐怖について話し合いたい,そして可能であれば答えを得たいという患者側の願望である。したがって,患者・家族がどのようなことについて心配しているのかを知ることにより,適切な対応が可能となる。
事実に基づいた説明や医師のモットーを伝えることは,患者のニーズと不一致になる可能性が高い。また,求められていない過剰な情報提供となり,患者を落ち込ませるリスクがある。
(有効でない)説得的応答「誰も未来のことはわかりません」「徐々に食欲が落ちていくと思います」「痛みが出てくるかもしれませんが,必ずその都度対処していきます」「そんなことを考えるよりも,もっと前向きに生きましょう」「くよくよしないで,もっと前向きにならないと,治るものも治りませんよ」
共感的な応答「今後について,とても心配しておられるのですね?」
患者は恐らくうなずくであろう。そして問わず語りに次を話してくれるかもしれない。→傾聴
開かれた質問「今後について,あなたが一番心配していることはどのようなことか教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
患者は間違いなく話してくれるであろう。
残り2,694文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する