株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

労働者の睡眠教育と対策の重要性とは(中田光紀 国際医療福祉大院疫学・社会医学分野長・教授)【この人に聞きたい】

No.4931 (2018年10月27日発行) P.8

中田光紀 (国際医療福祉大院疫学・社会医学分野長・教授)

登録日: 2018-10-26

最終更新日: 2018-10-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

働き方改革より“眠り方改革”を
睡眠不足と社会的時差ぼけの解消で
仕事のパフォーマンスや幸福度が上がる

なかた あきのり:1991年早稲田大人間科学部卒。97年東京大院にて社会医学を専攻し、医学博士取得。米国疾病予防センター・国立労働安全衛生研究所組織科学と人間工学部門職域ストレス研究室長、産業医大院教授などを経て、2018年4月より現職

日本人の睡眠時間は、先進国の中で一、二を争う短さで、平均睡眠時間は年々短くなっている。勤労者の大規模調査で睡眠問題と心身の健康との関係を研究している中田光紀氏に、睡眠問題の健康への影響とその対策を聞いた。

死ぬために働いているのか

─睡眠に関する大規模調査で分かったことを教えてください。

東京都と埼玉県の中小企業で、フルタイムで働く2643人を対象にした調査では、労働時間と睡眠時間、抑うつの関連を分析しました。その結果分かったのは、労働時間が1日8時間を超えていても、睡眠時間が6時間以上確保できていれば抑うつにはなりにくいということです。

睡眠時間が6時間未満の場合には、労働時間が長くなるほどうつ病評価尺度で軽度、重度抑うつの割合が上がりました。睡眠6時間以上・労働6〜8時間群に対する重度抑うつのオッズ比は、睡眠6時間未満・労働8〜10時間群が1.67倍、睡眠6時間未満・労働10時間以上は2.69倍でした。

また、全国227企業で働く労働者12万978人を対象にした大規模な調査で、残業時間と睡眠時間、希死念慮との関係を解析したところ、やはり、睡眠時間が6時間未満の場合には、残業時間が長くなればなるほど希死念慮が高まることが分かりました。睡眠6時間以上の群は、残業時間が月60時間を超えても希死念慮が高まらなかったのに対し、残業が月30時間未満でも、睡眠6時間未満になると希死念慮は、睡眠6時間以上の人の1.33倍、残業60時間を超えると1.63倍でした。

労働者健康状況調査(厚生労働省、2012年)によると、1日6時間未満しか眠らない人は日本人の労働者の半数近くの46.5%です。日本人は睡眠時間を削って働いています。それで過労死や過労自殺が後を絶たないわけですから、日本人は死ぬために働いているのか、と問いたいです。

プレミアム会員向けコンテンツです(期間限定で無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top