【呼吸器を守るバリア機構からの警報】
気管支喘息は好酸球浸潤を伴う慢性気道炎症を特徴とする。吸入ステロイド製剤の普及により死亡率は大幅に減少したが,10%は依然治療抵抗性を示し,その重要な素因としてステロイド抵抗性がある。
ステロイドの感受性低下は,古くは1976年に高グルココルチコイド血症にもかかわらずクッシング徴候を欠く家系が報告された1)。その後,家族性の原因の多くはグルココルチコイドレセプター(GR)遺伝子異常であると解明された。一方,気管支喘息におけるステロイド抵抗性機序の大半は後天的であり,原因は大別して,①転写因子によるGRの阻害,②HDAC2の減少,③サイトカインとリンパ球系細胞の影響,が挙げられる。ステロイド抵抗性を示すリンパ球系細胞としてはTh17細胞,2型自然リンパ球の報告に加え,筆者らは肺に常在するTh2細胞がIL-33の存在下でステロイド抵抗性を示すことを発見した2)。IL-33は気道上皮細胞に常在し,障害により放出されるalarminの一種で,Th2細胞,2型自然リンパ球を刺激し,IL-5を介して好酸球炎症を惹起する。同じく,上皮細胞由来サイトカインであるTSLPもステロイド抵抗性を惹起する因子として着目され3),肺のバリア機構である上皮細胞由来のサイトカインに起因するステロイド抵抗性は,新たな治療標的になると期待される。
【文献】
1) Vingerhoeds AC, et al:J Clin Endocrinol Metab. 1976;43(5):1128-33.
2) Mato N, et al:Sci Rep. 2017;7(1):6805.
3) Kabata H, et al:Nat Commun. 2013;4:2675.
【解説】
間藤尚子*1,萩原弘一*2 自治医科大学呼吸器内科 *1准教授 *2教授