【症例】 COPD,高血圧の既往があるADLの自立した78歳の独居男性,元運転手
【現病歴】 62歳のときに労作時の呼吸苦を自覚して近所の内科にてCOPDの診断を受けた。以後,薬物療法を受けるが呼吸器リハビリテーションや栄養指導などは受けていなかった。ここ1年間で食欲が低下して44kgから38kgと体重減少を認める。食事はコンビニエンスストアで購入。かかりつけ医までの歩行時間が2年前の倍かかるようになり,倦怠感が続いていた。喀痰量は変わらず,膿性喀痰は認めないが,階段を昇ると呼吸苦が悪化するため外来を受診した。転倒歴はなく,肺炎球菌ワクチンは未接種。
【既往歴】 54歳時に高血圧,62歳時にCOPD
【内服薬】 エナラプリル5mg,チオトロピウム1日1回1吸入,ホルモテロール1日2回1吸入
【アレルギー】 なし
【社会歴】 65歳まで建築業,60歳時に離婚して独居,息子と娘が1人ずついるが連絡はとっていない,両親兄弟ともにいない,16歳より現在まで1日20本程度の喫煙,飲酒は機会飲酒,ADL/IADLは自立,居住環境:5階建てマンション,介護保険申請なし
【身体所見】 身長165cm,体重38kg,BMI 14,血圧128/76mmHg,脈拍98bpm・整,呼吸回数16回/分,SpO2 92%(室内気),体温36.2℃
頭頸部:眼瞼結膜は桃白色,眼球結膜は黄染なし,頸静脈怒張なし,頸部リンパ節腫脹なし,胸鎖乳突筋の発達が著明,気管短縮を認める 胸部:呼吸音に左右差なし,両側下肺にfine cracklesを聴取する 心血管:心音は整,S1・2亢進なし,S3(−)・S4(−),第4肋間胸骨左縁にLevine Ⅱ度の全収縮期雑音を聴取する 四肢:浮腫なし,ばち指を認め,末梢は温かい 握力:右25kg,左22kg 認知機能:長谷川式認知症スケールで26/30点,老年期うつ病評価尺度(GDS15)にて0/15点,興味の減退や希死念慮は認めなかった
【検査所見】 白血球7820/μL,リンパ球840/μL,Hb 10.5g/dL,Plt 24×104/μL,TP 7.6g/dL,Alb 3.6g/dL,AST 38IU/L,ALT 35IU/L,Na 134mEq/L,K 4.1mEq/L,Cl 103mEq/L,Mg 2.5mEq/L,P 4.7mg/dL,BUN 16mg/dL,Cr 1.24mg/dL(eGFR 46mL/分/1.73m2),CRP 0.6mg/dL,PaCO2 58mmHg,尿蛋白(−)
今回のポイントは以下の3点である
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の健康寿命を上げるための診療の質を理解する。
・悪液質/カヘキシア(cachexia)の診断ができる。
・栄養療法の原則に基づいてCOPD患者の低栄養を早期発見してアプローチする。
それでは前掲の症例について①栄養療法の必要性のスクリーニングと5つの原則に則った初期評価,②治療方針とその内容,③必要栄養量・内容とその投与方法,④今後の栄養投与とリハビリテーション計画,そのほか必要なことを,多職種の目線で考えてみたい。
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