医療事故調査制度の第三者機関「医療事故調査・支援センター」に指定されている日本医療安全調査機構はこのほど、栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の再発防止策を公表した。事故調により収集された事例に基づき再発防止策がまとまるのは6回目。
■気管誤挿入後の水・栄養剤投与で死亡
事故調がスタートした2015年10月1日から今年5月までに報告された院内調査結果報告書697件のうち、胃管挿入に関連する死亡事例は6例。いずれも成人だった。機構では6例を分析し、6つの提言(下掲)をまとめた。
機構によると、気管の誤挿入により臓器を損傷して腹腔内や胸腔内などに入ってしまったとしても、直ちに死亡と結びつくことは極めて稀。死亡に至るほとんどは、ここから相当量の水または栄養剤が投与された場合であり、窒息、重篤な肺炎、腹膜炎、胸膜炎などを起こした結果、死に至る。今回検討した6例も、すべてそのような状況だった。
■気泡音による位置確認の不確実性を強調
こうした状況を踏まえ機構は、胃管が適切な位置にあることの確認のために臨床現場で頻用されている、いわゆる気泡音による位置確認の問題を指摘。
これまでも繰り返し不確実性が指摘されているものの、依然として気泡音による不確実な確認による死亡事例が報告されているため、提言では、改めて気泡音の不確実性を強調するとともに、位置確認の方法について記載した。さらに、誤挿入に加えて栄養剤を投与することが重篤な結果を招くことに鑑み、胃管挿入後に、誤挿入があっても影響が少ないと思われる50〜100mL程度の水の投与を行うことや、初回栄養剤投与時の観察の留意点について提言するなどしている。