【質問者】
多賀谷悦子 東京女子医科大学呼吸器内科学教授/講座主任
【服薬アドヒアランスの維持が要】
高齢者喘息では,若年期に発症して持続するタイプと中年期以降に発症するタイプとに分類され,60%以上は50歳以降に発症します。若年発症では,環境と遺伝子,アレルギー,Th2炎症などが関わりますが,中年発症ではエピジェネティクス(酸化ストレスや長年にわたる環境中の粉塵や紫煙の曝露),加齢による自然免疫の変化などにより,Th1や好中球性炎症などが関わってくるようになります。また,病状の面では発症年齢が高いほど重症化する傾向も認められます。
高齢者では,喘息と適切に診断されない場合があることに注意しなければなりません。夜間や日中の呼吸困難,喘鳴,咳嗽などの症状を,高齢者は加齢によるものと思い込んでいることがあります。また,日常活動の自己制限,社会的孤立,うつなども影響したり,自覚症状が併存する慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)やうっ血性心不全などによるものと誤認していることもあります。医療者側の問題点としては,「中年期で発症する喘息は稀」という誤った概念があったり,重症度が過小評価されたりすることです。さらに,COPD,うっ血性心不全,肺癌,逆流性食道炎,気管支拡張症,上気道閉塞,誤嚥,気道異物,過換気症候群,パニック障害,血管炎などとの鑑別も重要です。特にCOPDに関してはオーバーラップすることがあるために,診療の手引きが発行されました。
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