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子宮筋腫摘出術後の甲状腺機能亢進症の原因は?

No.4948 (2019年02月23日発行) P.58

岡本泰之 (岡本甲状腺クリニック院長)

登録日: 2019-02-26

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48歳,女性。6年前から甲状腺機能亢進症で投薬中。正常甲状腺機能の状態を維持してきましたが,最近,子宮筋腫の手術をしました。術前に少し機能亢進症気味だったので,ヨードを2~3日使用しました。小児頭大の子宮筋腫でした。
術後4カ月ですが,機能亢進症気味です。正常化しない理由として考えられることをご教示下さい。経過は表1の通りです。

(高知県 F)


【回答】

【種々の因子が報告されているが,明らかな誘因がないことのほうが多い】

正常甲状腺機能の状態を維持してきたとの記載ですが,まず正常甲状腺機能と判定するには甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)が基準値内の値を維持している必要があります。

表1に提示された甲状腺機能検査には,参考基準値および2017年11月のTSH測定値の記載がありませんので,正確な判断はできませんが,術前の2017年11月の時点も遊離トリヨードサイロニン(FT3)および遊離サイロキシン(FT4)の測定値からは軽度の甲状腺機能亢進状態ではないかと推測されます。そして,病勢の悪化傾向により術直前の2018年6月にはさらにFT3およびFT4が上昇し,その傾向が子宮筋腫摘出術の後も持続していると考えるのが妥当かと思われます。また,術前からの悪化傾向に加えて,さらに子宮筋腫摘出術がバセドウ病の増悪を加速させた可能性も考えられます。

  

バセドウ病の増悪因子として報告されているものを表2に示します。術前,術後を通して,これらの因子に該当するものがないかどうかをご確認下さい。

子宮筋腫摘出術の術前治療として,GnRH誘導体投与を行われたでしょうか。一般に,エストロゲンの濃度が高いときは免疫抑制に働きますが,逆に低くなると免疫促進的に働きます。そのため,頻度は低いのですが,GnRH誘導体による,ゴナドトロピンと性ホルモンの変動が自己免疫性甲状腺疾患の発症や増悪の引き金となることが知られています1)。出産後にバセドウ病が悪化したり,出産後甲状腺炎が発症するのも同様の現象と推測されています。

加えて,手術を受けるというストレスが増悪の一因となった可能性も否定できません。表3 2)はバセドウ病の発症,経過に影響する心理社会的要因をまとめたものです。なお,術前のヨード投与はごく短期間であり,増悪の誘因とは考えにくいと思われます。

以上のように,バセドウ病の増悪には種々の因子が報告されていますが,実際には病勢の悪化を認めたときに,明らかな誘因のないことのほうが多いと感じます。2018年10月以降も改善がないようであれば,さらにチアマゾールを増量する必要があると思われます。また,病勢の把握のためにTSHレセプター抗体価の増減傾向や甲状腺の腫大の程度などの評価も有用です。

【文献】

1) 西川光重:日内会誌. 2010:99(4):776-85.

2) 深尾篤嗣, 他:日甲状腺会誌. 2016;7(1):6-11.

【回答者】

岡本泰之 岡本甲状腺クリニック院長

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