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喘息予防・管理ガイドライン2018[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4951 (2019年03月16日発行) P.46

東田有智 (近畿大学医学部附属病院長)

綿谷奈々瀬 (近畿大学医学部附属病院呼吸器・アレルギー内科)

登録日: 2019-03-15

最終更新日: 2019-03-12

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  • 主なポイント〜どのようなガイドラインなのか

    1 診断において重要となる,問診・聴診・身体所見の項目が新たに追加

    2 治療では新たにLAMAの使用推奨範囲を拡大

    3 抗IL-5Rα抗体およびBTの治療を追加

    4 新たに吸入指導について追加

    1 総論:2015から2018へ

    気管支喘息(以下,喘息)は「慢性の気道炎症を本態とし,変動性を有する気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴づけられる疾患」と定義されている。わが国の喘息有症率は小児(15歳未満)で11~14%,成人(15歳以上)で6~10%であり,長期的に見ると増加傾向にある。

    一方で喘息死の数は戦後減少傾向で,2012年以降は年間2000人を下回り,2016年には1454人まで減少した。喘息死の減少は,喘息の基本病態が慢性の気道炎症であることが明らかとなり,それに伴い喘息の基本治療も気管支拡張薬中心の治療から,吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)を中心とした気道の抗炎症治療へとシフトしてきたことが大きい。このICSの普及に寄与してきたのが,「喘息予防・管理ガイドライン(JGL)」などのこれまでのガイドラインであり,病態の理解や疾患の啓発といった役割を果たしてきた。しかし,成人においては高齢者での喘息死が多く,喘息死の約90%を占めることや,一部の患者では,適切な治療にもかかわらずコントロールに難渋する例も存在し,喘息医療における課題が残されている。

    近年,重症難治性喘息に対する生物学的製剤の開発や気管支熱形成術(bronchial thermoplasty:BT)といった新たな治療の開発が進んでおり,それに伴い,今回新たに「喘息予防・管理ガイドライン2018」1)(以下,JGL2018)が発刊された。JGL2018における改訂では図表を増やすなど,非専門医も含めた多くの読者にとってわかりやすく,使いやすい構成となっている。

    2 診断

    なぜ変わったか

    喘息の診断には,スパイロメトリーによる呼吸機能検査や可逆性検査,気道過敏性検査,呼気中一酸化窒素(NO)濃度測定,喀痰中好酸球比率などが客観的な指標となる。しかし,そういった検査を行える施設は限られており,一般診療においては施行されていないのが現状である。一方,喘息の診断には病歴や身体所見が非常に重要であり,喘息の診断の絞り込みがある程度可能となる。そのため今回,喘息の診断において重要となる,問診・聴診・身体所見の項目が新たに追加された。

    ◉実臨床での対応
    (1)問診
    喘息患者は咳,喘鳴,息切れ,胸部絞扼感などを訴えて外来を受診することが多いが,これらは日常診療で頻繁に経験する非特異的な症状である。まずは感染性疾患の除外が必要であり,呼吸器以外の疾患の可能性も考慮しなければならない。成人の場合は年齢や喫煙歴,併存疾患も考慮して評価する。明らかな原因がなく,症状の持続性や反復性から喘息の可能性が高いと考えられた場合は,さらに追加問診によって情報を収集する(表1・2)。

      


    (2)聴診所見
    喘息を疑う場合には是非,呼吸音の聴診を行って頂きたい。喘息に特徴的な聴診所見は呼気性喘鳴(wheeze)であり,呼気延長を伴うこともある。安静換気で喘鳴が明らかでなくとも,強制呼出させると聴取可能な場合もある。喘鳴を聴取した場合は喘息の可能性を疑うが,常に同じ部位で聴取される場合は器質的狭窄の可能性もあり,明らかな呼吸音の左右差や水泡音,捻髪音が認められる場合は他疾患を疑う必要がある。

    (3)その他の身体所見
    併存症のない軽症喘息では,咳,喘鳴以外の身体所見は乏しい。胸郭変形や呼吸補助筋の強調,頸静脈怒張や浮腫,進行性のるい痩,ばち指などの存在は他疾患を示唆する。発作の際には気胸や縦隔気腫を併発することがあるため,皮下気腫の確認も必要である。喘息以外の疾患を疑う所見を表3に挙げる。

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