乾癬性関節炎(PsA)に対する生物学的製剤の使用がEULARおよびGRAPPA治療推奨において推奨されている
PsAは,多彩な症状を様々な重症度で呈する疾患であり,症例ごとの症状の多彩さを考慮した治療戦略の立案が重要である
PsAに対して,異なる標的を有する生物学的製剤が使用可能であるが,個々の症例に対する生物学的製剤の使い分けは確立されていない。一方,末梢血リンパ球解析は,症例ごとの病態の把握と最適な生物学的製剤の選択に有用である可能性がある
乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)の病態の主体は付着部炎であり,皮膚および末梢関節炎のみならず,脊椎関節炎,付着部炎,爪病変,指趾炎,ブドウ膜炎などの多彩な臨床症状を呈する。時に関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)と酷似した臨床症状,つまり滑膜炎を呈するが,その成り立ちはRAとPsAでは異なる。すなわち,RAにおいては滑膜炎を初発とし,骨と軟骨の破壊に至るのに対し,PsAでは付着部炎を初発とし,その炎症がenthesis organ(synovio-entheseal complex)に波及することにより,二次的に滑膜炎に至ると考えられている1)2)。また高い生活習慣病の合併率とそれらに起因する心血管病変の増加をもたらす。このようにPsAは,皮膚および末梢関節炎のみならず,付着部炎や脊椎炎など多彩な臨床症状や高い生活習慣病の合併率から著しいQOL低下をきたしうる疾患である。
乾癬(proriasis:PS)やPsAの病態形成においては,IFN-γやIL-12,IL-23,IL-17,IL-6,TNF-αなどの様々なサイトカインが重要な役割を果たすことが示されており,わが国でも,近年様々な生物学的製剤が保険収載され,実臨床においてその有効性が広く知られるようになった。しかし,PsAの多彩な症状を1つの生物学的製剤で同時に改善させることは時に困難で,治療抵抗性を呈する症例も存在する。また,TNF-α,IL-17,IL-12/23(p40)と異なる標的を有する薬剤が存在するにもかかわらず,個々の症例における薬剤選択法が確立されていないという問題が残っている。本稿では,PsAの治療目標,生物学的製剤治療とその使いわけ,そして当科で実践しているprecision medicineへの試みに関して述べる。