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子宮内膜症における仙骨子宮靱帯の構造について

No.4954 (2019年04月06日発行) P.52

松本 貴 (健保連大阪中央病院婦人科医務局長兼婦人科部長)

谷村 悟 (富山県立中央病院産婦人科部長)

登録日: 2019-04-03

最終更新日: 2019-04-02

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  • 子宮内膜症性疼痛が高度な症例に対して深部子宮内膜症切除を行う際,多くの症例で仙骨子宮靱帯(uterosacral ligament:USL)の硬結の切除を行うことになりますが,どこまでの病巣を切除するのが適切なのかしばしば迷うことがあります。切除が浅ければ,子宮内膜症が遺残して早期に再発するかもしれませんし,また,深過ぎれば,膀胱直腸障害や直腸血管の損傷が起こりうると思います。
    USL周辺の解剖学的構造と子宮内膜症における解剖の変化について,富山県立中央病院・谷村 悟先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    松本 貴 健保連大阪中央病院婦人科医務局長兼婦人科部長


    【回答】

    【長くあいまいであったが,近年新たな解剖学が推し進められている】

    子宮内膜症におけるUSL病変のコアであり切除対象は,いわゆる直腸子宮靱帯(recto- uterine ligament:RUL)です。内膜症の進展により左右のRULは結節化し,中央に寄り一塊となり,由来が謎とされてきたダグラス窩結節病変となります。

    子宮内膜症はしばしばUSLに硬結病変を形成するとされていますが,そもそもUSLの解剖学的コンセンサスはあいまいでした。系統解剖学では子宮を腹側に牽引し,背側に突っ張った構造をすべてUSLとしてきました。そのためUSLには神経・血管など様々な部位を含むことになりました。また,以前は臓器間の脂肪に意味を持たせることはありませんでしたが,近年直腸をはじめとし,手術に臓器間膜という概念が持ち込まれ,さらに腹腔鏡の精細な視野が新たな解剖学を推し進めています。

    筆者らが非内膜症症例から明らかにした靱帯構造はいわゆるRULであり,子宮を牽引しなければ腹背側ではなく4時8時方向に横たわります。腹側は子宮頸部と腟上部,背側は直腸側方靱帯で,内側は骨盤神経叢,尾側は直腸脂肪でした。子宮を腹側に牽引し背側に突っ張るUSL構造には,RULだけでなく側方靱帯(骨盤神経叢直腸枝)を含む直腸間膜,その背側の骨盤内臓神経,頭側の下腹神経,外側の子宮血管も含まれています。

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