【質問者】
松本 貴 健保連大阪中央病院婦人科医務局長兼婦人科部長
【長くあいまいであったが,近年新たな解剖学が推し進められている】
子宮内膜症におけるUSL病変のコアであり切除対象は,いわゆる直腸子宮靱帯(recto- uterine ligament:RUL)です。内膜症の進展により左右のRULは結節化し,中央に寄り一塊となり,由来が謎とされてきたダグラス窩結節病変となります。
子宮内膜症はしばしばUSLに硬結病変を形成するとされていますが,そもそもUSLの解剖学的コンセンサスはあいまいでした。系統解剖学では子宮を腹側に牽引し,背側に突っ張った構造をすべてUSLとしてきました。そのためUSLには神経・血管など様々な部位を含むことになりました。また,以前は臓器間の脂肪に意味を持たせることはありませんでしたが,近年直腸をはじめとし,手術に臓器間膜という概念が持ち込まれ,さらに腹腔鏡の精細な視野が新たな解剖学を推し進めています。
筆者らが非内膜症症例から明らかにした靱帯構造はいわゆるRULであり,子宮を牽引しなければ腹背側ではなく4時8時方向に横たわります。腹側は子宮頸部と腟上部,背側は直腸側方靱帯で,内側は骨盤神経叢,尾側は直腸脂肪でした。子宮を腹側に牽引し背側に突っ張るUSL構造には,RULだけでなく側方靱帯(骨盤神経叢直腸枝)を含む直腸間膜,その背側の骨盤内臓神経,頭側の下腹神経,外側の子宮血管も含まれています。
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