医学部不正入試問題を受けて設置された文部科学省の「大学入学者選抜の公正確保等に関する有識者会議」(座長=岡本和夫独立行政法人大学改革支援・学位授与機構顧問)は5日、全学部の入試で公正性を確保するための共通ルールを示した「審議経過報告」をまとめた。特定の受験者の優遇や性別など属性を理由とする差別的な取扱いは「禁止」と明記。同会議は5月にも「最終報告」を取りまとめる方針だとしている。最終報告を踏まえ文科省は、2020年度入試の実施要項を改訂する予定。
審議経過報告では、学生募集段階から合格発表までの入試のプロセス全体を通じて、公正性を確保するための方策を提示した。
学生募集段階では、地域枠など特定の属性による特別枠を設定する場合は、その内容や導入理由、募集人員、出願要件を情報提供し、社会への説明責任を果たすべきだとした。性別による一律の取扱いの差異は、「説明困難」と断言。同窓生子女枠の設定については、必要性・妥当性に関して「より丁寧な説明が必要」と指摘した。
出願手続段階では、保護者の氏名、職業、出身校など評価・判定に用いない情報を入学志願者に求めないことを明記。そうした情報を入手した場合でも、マスキングを施すなど細心の注意を払う必要があるとした。保護者や関係者からの特定受験者の優遇を求める働きかけや寄付の申し出には「大学として毅然と対応するのは当然」だとした。
試験問題の漏洩防止は基本だとし、採点時は受験者情報をマスキングし、複数人で採点や確認を行うなど様々な方策を組み合わせることが重要だと指摘。小論文、面接、実技検査等では、実施方法や評価方法のマニュアル化を求めた。
合否判定での特定の受験者の優遇や属性を理由とする差別的な取扱いは「禁止」と強調。特定個人の恣意的な判断によって判定が歪められることのないよう、教授会や入試委員会など合議制の会議体で判定すべきだとした。評価に用いない受験者氏名や性別、年齢、保護者情報などは資料に記載しないよう求めた。
審議経過報告ではまた、選抜に求められる透明性と入試情報に求められる機密性の確保について、「バランスをとる必要がある」との考えを示した。多くの医学部入試の面接で医師になろうとする動機や熱意、弱者や他者への配慮など医療者として不可欠な資質を評価するが、面接試験の評価の観点、配点等の詳細を明らかにすると、入学志願者がそのための対策を講じ、本来必要な評価ができにくくなるといった弊害が指摘されていることを受け、留意を促した。
同日の閣議後会見で柴山昌彦文科相は、「各大学でしっかりと入試の点検、改善をしてほしい。文科省としても必要に応じて、調査・指導を行っていく」と述べた。