成長ホルモン(growth hormone:GH)は生涯にわたり分泌され,成人期では代謝調節やQOLの維持に重要な役割を持つ。小児期発症例は特発性が多く,成人期発症例は下垂体腫瘍,頭蓋咽頭腫などが挙げられる1)。診断にはGH分泌刺激試験を行う。重症成人成長ホルモン分泌不全症はGH補充療法が認可されており,GH補充により代謝異常やQOLの改善がみられる。
①体組成の変化(内臓脂肪の増加,除脂肪体重の減少,筋肉量の低下,骨塩量低下など)
②代謝変化(高LDL-コレステロール血症,低HDL-コレステロール血症,高トリグリセリド血症)
③肝機能障害〔非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)〕
④QOL低下(スタミナの低下,集中力低下,気力低下,うつ状態など)
GH分泌刺激試験として,インスリン負荷試験,アルギニン負荷試験,グルカゴン負荷試験,またはGHRP(growth hormone-releasing peptide)-2負荷試験を行い,下記の値が得られること。
インスリン負荷試験,アルギニン負荷試験,またはグルカゴン負荷試験では,負荷前および負荷後120分間(グルカゴン負荷試験では180分)にわたり,30分ごとに測定してGHの頂値が3ng/mL以下で成人成長ホルモン分泌不全症とする。中でもGHRP-2負荷試験で負荷前および負荷後60分間にわたり,15分ごとに測定したGHの頂値が9ng/mL以下であるとき,インスリン負荷試験やアルギニン負荷試験,グルカゴン負荷試験におけるGH頂値1.8ng/mL以下に相当する低GH分泌反応である,といった2種類以上のGH分泌負荷試験で基準を満たせば重症成人成長ホルモン分泌不全症とし,それ以外のものは中等度に分類する。
参考所見として,インスリン様成長因子(insulin-like growth factors:IGF)-1値が年齢および性別を考慮した基準値に比べ低値である。
また,頭蓋内器質性疾患や周産期異常の既往を有し,かつGHを含めた複数の下垂体ホルモン分泌低下を認める症例は1種類のGH分泌負荷試験において基準を満たすもので判定される。成人期にGH単独欠損症を診断する場合には,下垂体病変を有していても,2種類のGH分泌負荷試験において基準を満たすか確認する。詳細については厚生労働省の間脳下垂体機能障害調査研究班から示された「成人成長ホルモン分泌不全症の診断の手引き」2)を参照されたい。
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