【長期投与により副作用が発現。山梔子が要因のひとつか】
更年期障害に対する第一選択はホルモン補充療法であるが,欧米に比べてわが国での使用率は低い。一方で,補完代替療法として漢方療法が選択されている。日本産科婦人科学会のガイドラインには「当帰芍薬散,加味逍遙散,桂枝茯苓丸などを中心に用いる(C)」とあり1),中でも加味逍遙散は最も使いやすい漢方薬で,精神神経症状を訴える更年期女性に多用される。
最近,長期投与で問題となっている副作用に腸間膜静脈硬化症がある。これは腸間膜静脈の硬化,石灰化に起因する灌流障害であり,腹痛,下痢,嘔気・嘔吐などが繰り返しみられ,重症では腸閉塞により手術を要する症例もある。山梔子を含む漢方薬の長期投与が発症要因の可能性のひとつに挙げられており,山梔子中のゲニポシドが腸内細菌によりゲニピンに変化し,腸間膜静脈壁に作用していると考えられている。
全国調査で本疾患222例中169例に漢方薬服用歴があり,その中で119例が山梔子含有処方であった。特に加味逍遙散の報告が最も多く,ついで黄連解毒湯,辛夷清肺湯などである2)が,山梔子を含むものは全部で14製剤もあり,注意を要する。特に5年以上の長期にわたる場合は,大腸内視鏡検査を受けることをぜひ勧めたい。
【文献】
1) 日本産科婦人科学会, 他, 編:産婦人科診療ガイドライン─婦人科外来編2017. 日本産科婦人科学会, 2017, p276-8.
2) 日比紀文, 他:腸管希少難病群の疫学, 病態, 診断, 治療の相同性と相違性から見た包括的研究 平成25年度総括研究報告書. 2014, p91-3.
【解説】
西田欣広*1,楢原久司*2 大分大学産科婦人科 *1准教授 *2教授