【治療と職業生活の両立支援への貢献】
労働災害防止計画は戦後の労働災害や職業性疾病の急増に伴い,1958年に第1次計画が策定され,以後5年ごとの見直しを経て,わが国の安全衛生水準を大きく改善させてきた。2018年4月1日より始まった第13次計画では,安全衛生対策の継続的な実施に加え,就業形態や個人特性の多様性をふまえた安全と健康の確保をめざしている。①死亡災害の撲滅,②過労死等の防止,③就業構造の変化および働き方の多様化への対応,④治療と職業生活の両立支援,⑤化学物質対策,⑥企業・業界単位での安全衛生の取組み,⑦安全衛生管理組織の強化および人材育成,⑧国民全体の安全・健康意識の高揚,の8つの重点事項のうち,特に④の「治療と職業生活の両立支援」では産業保健の専門家の尽力が強く求められている。
16年2月に厚生労働省より出された両立支援ガイドラインは,18年4月に増補され,企業内での制度設計や情報の保護,労働者本人が行うべき事項等について触れられている。この中で最も重要な「主治医との連携」については,産業医や産業看護職などが主治医に当該労働者の勤務情報を提供するとともに主治医の意見および診療情報を収集し,企業が適切な支援を実現できるよう調整することが強く期待されている。
【参考】
▶ 厚生労働省:第13次労働災害防止計画. [https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/ 000341163.pdf]
▶ 厚生労働省:事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン.
[https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdou happyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000113625_1.pdf]
【解説】
佐藤博貴,上島通浩* 名古屋市立大学環境労働衛生学*教授