インスリン抵抗性が主因である欧米型の2型糖尿病(DM)においても、近年、β細胞機能低下の寄与が明らかになり、「2型DM発症早期における、積極的血糖低下治療によるβ細胞機能回復の可否」が注目されるようになった。
6月7日から米国サンフランシスコで開催されている米国糖尿病学会(ADA)において報告されたRISE(Restoring Insulin Secretion) Adult Medicationスタディは、まさにこの「可否」を検討したランダム化試験である。しかし結果はネガティブに終わった。9日、インディアナ大学(米国)のKieren J. Mather氏が報告した
RISE Adult Medicationスタディの対象は、耐糖能異常(IGT)、または診断から1年未満の2型DM例のうち、糖尿病治療薬使用歴がなく、HbA1cが7.0%以下だった267例である。約75%がIGTで、HbA1c平均値は約5.7%、空腹時血糖値は110mg/dL強、糖負荷2時間後血糖値は約180mg/dLだった。
これら267例は以下の4群にランダム化され、1年間追跡された。すなわち「メトホルミン単剤」群(65例)、「GLP-1アナログ・メトホルミン併用」群(68例)、「持効型溶解インスリンアナログ9カ月後メトホルミン」群(67例)と「プラセボ」群(67例)――である。1次評価項目は、治療前と1年間治療終了3カ月後のβ細胞機能の差とされた。β細胞機能は、高血糖クランプ下の血中Cペプチド濃度で評価した。
その結果、血糖低下治療を行なった3群ではいずれも、1年間の治療終了時、プラセボに比べ、HbA1c、体重(インスリン群を除く)の有意な改善を認めた。
にもかかわらず、治療終了3カ月後のβ細胞機能は、いずれの治療群もプラセボ群と有意差を認めなかった。特にGLP-1アナログ群では1年間の治療終了時のβ細胞機能の改善が著明だったが、治療中止3カ月後には治療開始前と同等まで低下していた。
この結果につきMather氏は「いくぶん驚いている」とプレスリリースを通してコメントした。
本試験は、米国糖尿病・消化器・腎疾病研究所と退役軍人省から資金提供を受けた。また報告と同時に、Diabetes Care誌でオンライン公開された。