GLP-1アナログは2型糖尿病(DM)例に対して、プラセボを上回る心血管系イベント抑制作用が、LEADERSなど4つの大規模試験(※)で証明されている。しかしそれらの試験の対象はいずれも、心血管系(CV)疾患既往例が70~100%を占める高リスク集団である。そのため、よりCVリスクの低い2型糖尿病例に対するGLP-1アナログの有用性は不明だった。
この疑問に答えたのが、 "REWIND" 試験である。約70%がCV疾患1次予防である2型DMを対象に、心血管系イベントをプラセボに比べ相対的に12%、有意に減少させた。6月7日から米国サンフランシスコで開催されている米国糖尿病学会(ADA)における9日のセッションで、マクマスター大学(カナダ)のHertzel C. Gerstein氏が報告した。
REWIND試験の対象は、「HbA1c≦9.5%」かつ「BMI≧23kg/m2」の2型DM 9901例である。経口血糖低下薬3剤以上の併用例は除外されている。またDPP-4阻害薬とGLP-1アナログ使用例では、試験前に中止した。
平均年齢は66歳、46%が女性で、HbA1c平均値は7.3%、糖尿病罹患期間は平均10.5年だった。血糖低下薬は、メトホルミン服用が81%、次いでSU剤の46%だった。
合併症を見ると、虚血性CV疾患既往例は32%のみだった(心不全既往は9%)。また「eGFR≦60mL/分/1.73m2」例は22%。顕性タンパク尿例は35%だった。
これら9901例は、GLP1アナログ(デュラグルチド1.5mg)皮下注/週群とプラセボ群にランダム化され二重盲検下で5.4年間(中央値)観察された。
その結果、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」発生率は、プラセボ群の2.7/1000例・年に対し、GLP-1アナログ群では2.4/1000例・年となり、有意なリスク低下が認められた(ハザード比 [HR] :0.88、95%信頼区間 [CI]:0.79-0.99)。ただし本試験の「心筋梗塞」には、LEADERS、SUSTAIN 6両試験と同様に、臨床症状を伴わない「無症候性」も含まれている(バイオマーカーと心電図/画像所見に基づく)。また両試験とは異なり、現時点では「非致死性心筋梗塞」に占める「無症候性」心筋梗塞の割合は明らかでない(LEADERS、SUSTAIN 6は評価項目として、デザイン論文にも明記)。
これら1次評価項目を個別に検討すると、著明なリスク減少が認められたのは脳卒中だった(HR:0.76、95%CI:0.62-0.94)。一方、心筋梗塞のHRは0.96(95%CI:0.79-1.15)、CV死亡は0.91(同:0.78-1.06)である。また、非CV死亡(0.88)、総死亡(0.90)、心不全入院(0.93)リスクはいずれも、両群間に有意差を認めなかった(カッコ内は対プラセボ群HR )。
さらに眼合併症と腎合併症を合わせた細小血管症も、GLP-1アナログ群で有意なリスク低下を認めた(HR:0.87、95%CI:0.79-0.95)。
なお、重篤な有害事象には、有意差を認めなかった。
指定討論者であるモナシュ大学(豪州)Sophia Zoungas氏は、GLP-1アナログを2型DM例に用いた他の試験と本試験の違いとして、脳卒中と心筋梗塞の減少率に大きな差がある点を挙げた。
本試験はEli Lilly and Company社提供の資金で行われた。また報告と同時に、Lancet誌でオンライン公開された。
※LEADERS、SUSTAIN 6、EXSCEL、HARMONY