【心身医学的アプローチを系統的に教育するプログラム構築への期待】
2018年4月より開始となった新専門医制度では,第19番目の専門領域として「総合診療専門医」が新設され,総合診療専門医に欠かせない7つの資質・能力が示されている。
①包括的統合アプローチ,②一般的な健康問題に対する診療能力,③患者中心の医療・ケア,④連携重視のマネジメント,⑤地域包括ケアを含む地域志向アプローチ,⑥公益に資する職業規範,⑦多様な診療の場に対する能力,である。
臨床現場においては,機能性身体症候群(functional somatic syndrome:FSS),不定愁訴群(medically unexplained symptoms:MUS)が,プライマリ・ケア領域,二次医療圏を受診する患者の15~53%に該当するとの報告がある。診断・治療に心身医学的アプローチが有用とされており,総合診療医が心身医学の素養を身につける必要性が増してきた。一方,心身医学的アプローチを系統的に教育するシステムは心身医学関連の講座を有する大学,臨床部門を有する医療施設が個別に確立してきているが,共通のプログラムは存在していない。系統的な教育プログラムの構築と啓蒙が心身医学領域のミッションとなっている。
プライマリ・ケア領域における心身医学の重要性は,日野原重明,池見酉次郎らによってわが国に提唱され,50年以上の歴史がある。日野原は,「プライマリ・ケア医学の基礎には心身医学の存在がなければならないと考える」1)と述べている。ようやく時代が追いついてきたのかもしれない。
【文献】
1) 日野原重明:聖路加看大紀. 1991;17:1-8.
【解説】
西山順滋 関西医科大学心療内科・同附属病院総合診療科
福永幹彦 関西医科大学心療内科教授