国立成育医療研究センターは8月8日、過去7年間(2010~16年)の日本におけるダウン症候群(21トリソミー)の年間推定出生数を論文として報告し、7月に米国遺伝医学雑誌(American Journal of Medical Genetics Part A)に掲載されたと発表した。研究成果は、同センターの佐々木愛子医師と左合治彦医師によるもの。08年に発表された論文では、妊婦の高年齢化に伴いダウン症候群児が激増すると予測されていたが、実際の動向は10年以降ほぼ横ばいであることが示された。
同研究では、出生届を基に報告されている出産母体の出産時年齢と出生数から、単純に予測されるダウン症候群の出生数に出生前診断(確定検査)の影響を加味することで、ダウン症候群の年間出生数を推計した。
その結果によると、10~16年におけるダウン症候群の年間推定出生数は2200人(1万出生当たり22)前後で安定していた。16年生まれのダウン症候群児では、約20%が出生前診断を受けており、母体の約70%は35歳以上の高年妊娠と推定された。佐々木氏らは、妊婦の高年齢化が進む中で出生前診断が普及したことが、10年以降の横ばい傾向につながったとみている。
日本にはダウン症候群の出生数を記録する公的な仕組みがなく、同研究が現時点で最も実態を捉えたデータとなる。佐々木氏は「出生前診断を取り巻く問題は非常に複雑だが、なるべく正確な実態把握が議論の出発点になると思う」と話しており、今後の医療・福祉制度について倫理面、医療経済面を含めて検討する際の土台としてデータが活用されることに期待を示した。