高トリグリセライド(triglyceride:TG)血症は動脈硬化性疾患の独立した危険因子であり,高レムナント血症や低high density lipoprotein cholesterol(HDL-C)血症,small dense LDLの増加といった動脈硬化惹起性脂質異常を伴うことが多い。また,500mg/dL以上の高TG血症では,急性膵炎のリスクが高まる。
早朝空腹時に採血を行い,TG値を測定する。150mg/dL以上を高TG血症と診断する。併発する動脈硬化惹起性脂質異常の診断として,HDL-C値(低HDL-C血症は40mg/dL未満),レムナント様リポ蛋白コレステロール値(remnant like particles-cholesterol:RLP-CまたはRemL-C,高レムナント血症は7.5mg/dL以上)の測定を行う。また,増加しているリポ蛋白の種類の確認に,電気泳動法でリポ蛋白分画を調べる。
原発性脂質異常症であるⅢ型高脂血症を疑った場合は,アポ蛋白Eの遺伝子型・表現型(ただし,保険適用外)を,リポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL)欠損症やアポC-Ⅱ欠損/異常症を疑った場合は,ヘパリン静注後のLPL値やアポC-Ⅱ値の測定を行う。なお,LPLやアポC-Ⅱ以外の遺伝子異常による非常に稀な高TG血症を示す疾患も近年発見されており,異常高値の高TG症例の場合は,脂質専門家への紹介を考慮する。
外来や健診でみられる高TG血症のほとんどは,過食や飲酒,肥満やメタボリックシンドロームといった生活習慣病に続発するものである。それゆえ,薬物療法を行う前に,食事療法や運動療法による生活習慣の改善,体重の適正化が重要である。ただし,TG値が500mg/dL以上の場合は急性膵炎のリスクが高まるので,生活習慣の改善と同時に薬物療法を開始することも考慮する。また,クッシング症候群や褐色細胞腫,あるいはネフローゼ症候群に伴って続発的に高TG血症を呈する症例では,原疾患の治療を優先する。利尿薬やβ遮断薬,抗HIV薬などの薬剤に伴う高TG血症も存在するので,そのような薬剤を内服している場合は,状況が許せば薬剤変更を考慮する。
Ⅲ型高脂血症は,アポ蛋白E異常症あるいはアポE2/E2の個体に内分泌・代謝疾患が併発した際に発症する疾患であり,レムナントが血中に蓄積するのが特徴で,コレステロール値とTG値がほぼ同程度に上昇する。身体所見は手掌線状黄色腫が特徴的であり,食事療法やPPARα修飾薬に反応して改善を認める症例が多い。LPL欠損症やアポC-Ⅱ欠損/異常症は100万人に1人程度の非常に稀な疾患であり,TG値は通常1000mg/dL以上に上昇する。アポC-Ⅱ欠損/異常症の中には成人になってからみつかる症例もあるが,LPL欠損症のほとんどは小児期に急性膵炎で発症する。発疹性黄色腫は特徴的な所見であり,食事療法として中鎖脂肪酸が主であるマクトンオイルを使っての調理も勧める。
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