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軽量携帯型X線装置の活用で入院のベッドサイドと遜色ない訪問診療を展開[クリニックアップグレード計画 〈医療機器編〉(14)]

No.4995 (2020年01月18日発行) P.14

登録日: 2020-01-16

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医療機器の高機能化・小型化といった進歩により、在宅で提供できる医療の幅は広がっている。ポータブルタイプのエコーを活用した在宅超音波検査を実施する施設が増えており、さらに今後、携帯型X線撮影装置の普及が進めば、在宅での診断能力は大きく向上する。シリーズ第14回は、X線撮影装置とエコーを駆使し、病院のベッドサイドで行われる処置と同等レベルの医療を提供するクリニックの事例を紹介する。



少し古いデータになるが、厚生労働省が2013年に実施した「在宅医療における医療機器等ニーズ調査」によると、医師が使用者である医療機器のうち改良のニーズが最も高かったのは「診断用X線装置」の35.5%、次いで「超音波画像診断装置」の22.3%となっている。いずれも小型化・軽量化・ポータブル化を求める声が多かった。

その後エコーの改良は進んだが、長らくX線装置のラインナップに大きな変化は見られなかった。在宅でX線検査が実施できれば、在宅患者に多い誤嚥性肺炎や骨折の有無などを確認することが可能になるが、価格に加え、既存製品の重さや大きさといった携行性が現在でも普及のネックとなっている。

こうした状況の中、2018年10月に登場したのが、従来の携帯型X線装置の約半分の3.5kgという軽量化を実現した富士フイルムメディカルの「CALNEO Xair」(https://fujifilm.jp/business/healthcare/digital_xray_imaging/dr04/calneo_xair/index.html)。携行性に優れ、在宅や救急現場などスペースが限定された場所でのX線検査と画像確認をサポートする、デザインにも特徴のある携帯型X線撮影装置だ(写真)。

X線装置をバイクに積んで訪問診療

神奈川県川崎市にある高津駅前クリニックの渡部真人院長は、2019年4月の開業時からCALNEO Xairを訪問診療に活用している。

「外科出身ということもあって在宅でどこまで治療ができるか、という部分を課題と考えていました。私のイメージを実現するために必要だと感じたのがエコーとX線です。ポータブルエコーは選択肢が豊富でしたが、携行性に優れたX線装置はCALNEO Xairのほかにはなかったので即決しました。エコーとX線を組み合わせれば、相加効果ではなく相乗効果を生み出すことができると思います」

渡部さんは狭い路地が多い土地柄を考慮し、ピザの配達に使うような、トランクが大きめのバイクに診察道具を積んで、機動的に患者宅や施設を訪問している。このスタイルを実現するには、軽くて持ち運びに便利であることが必須条件だったという。

CALNEO Xairの特徴は、画期的な軽さに加え、付属のノートPC型コンソールを活用して撮影画像をその場ですぐ確認できる点にある。重さや大きさにより運搬が困難で、医療機関に戻らないと画像を確認できないという既存製品が抱えていた課題をクリアした。その場で画像を確認できるメリットを実感する症例に渡部さんも遭遇してきた。

「息が苦しいと訴える患者さんがいて、肺炎かなと当たりをつけていたらX線画像で肺に水が溜まっていることが確認でき、すぐに大学病院に搬送しました。X線撮影をしなければ心不全ではなく肺炎の治療をするところでした。X線から得られる情報はそんなに多くはないのですが、訪問診療の現場ではとても重要だと改めて感じました」

据置型の上位機種と同等レベルの画質

画質については、同社の画像読取技術であるISS方式を採用。高感度検出に対応したカセッテDRと画像処理技術により、診断に十分な画質のX線画像が低線量でも得られる。

はCALNEO Xairで撮影したX線画像。Case①は、帝京大溝口病院で転移性肺腫瘍と診断、画像で経過観察していたが、施設に入所したため通院困難に。その後同院で訪問診療を行い、画像フォローしている90代男性の胸部とその一部を拡大したもの。左上葉部に1cmの小結節がしっかりと確認でき、経過を定期的に観察している。

Case②は、同院の外来に通院していた70代女性患者の左手を撮影したもの。自宅で転倒し左手をぶつけたため、X線撮影で骨折がないことを確認。肺以外の部位でもこのように鮮明な画像が取得可能だ。

渡部さんはCALNEO Xairの機能と活用法についてこう語る。

「私は呼吸器が専門なので胸部X線を撮影するケースが最も多いです。画質は大学病院で撮影していたものと比較してもひけをとらないレベルで、胸部が一番きれいに撮影できる印象です。在宅でX線を撮影する一番のメリットは、何かの病変を見つけるというよりも、疾患のフォローを患者さんとご家族にとって負担が少ない形で継続できるところにあると感じています。画質はCTに劣りますが、どのように変化していくのかを観察するのに非常に有用なツールです」

病院との架け橋となるクリニックに

渡部さんは開業後の現在も帝京大溝口病院に籍を置き、スムーズな地域連携に尽力している。

「大学病院と地域の在宅クリニックとの連携は、顔の見える関係性ができていないとうまくいきません。兼務していれば手間も省くことができるので、しばらく継続していくつもりです。訪問診療でX線やエコーを活用しているのも連携をスムーズにするという狙いがあります。撮った画像を持っていけばすぐに診てもらうことができ、次の治療につなげる判断が迅速かつ的確になります。地域のクリニックが高度な医療を提供する必要はありませんが、病院との架け橋になれるような存在でありたいと考えています」

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