1型糖尿病は膵β細胞の破壊によって発症する糖尿病である。体内で唯一のインスリン産生細胞である膵β細胞が破壊されるため,インスリンの絶対的欠乏をきたし,インスリン依存状態(インスリン投与を続けなければ生命を維持できない状態)になる。
口渇・多飲・多尿・体重減少などの高血糖症状で発症し,インスリン依存状態になる。インスリン依存状態は,①ケトーシス・ケトアシドーシスの存在,②継続してインスリン治療が必要であること,で診断する。高血糖症状からインスリン依存状態になるまでの経過の早さによって,急性発症(3カ月以内),劇症(1週間以内),緩徐進行(3カ月以上),の3病型に分類される。
上記臨床症状を有する症例で,①膵島関連自己抗体が陽性,または②内因性インスリンの枯渇,が証明されれば1型糖尿病と診断できる。膵島関連自己抗体としては,グルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase:GAD)抗体およびinsulinoma associated protein-2(IA-2)抗体が保険適用されている(IA-2抗体はGAD抗体が陰性の場合のみ適用)。臨床的にインスリン依存状態と考えられる症例で,膵島関連自己抗体が陽性であれば1型糖尿病(自己免疫性)と診断される。膵島関連自己抗体が陰性でも内因性インスリンが枯渇(空腹時血清CPRが0.6ng/mL未満)していれば1型糖尿病と診断される。
インスリン注射によって必要十分なインスリンを補充することが治療の基本である。
健常人の生理的インスリン分泌は基礎インスリンと追加インスリンから構成される。基礎インスリンは,食事の有無にかかわらず基礎代謝の維持・調節に必要なインスリンであり,追加インスリンは食事の処理に必要なインスリンである。体調不良(シックディ)などで食事が摂れないときでも基礎インスリンは必ず投与する。追加インスリンは摂取する食事・栄養に応じて柔軟に投与する。インスリンの投与法には頻回注射と持続皮下インスリン注入療法(インスリンポンプ療法)がある。
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