妊娠と薬情報センターでは,妊婦や妊娠を希望する女性を対象として相談業務を行っている
妊娠と薬情報センターでは,相談業務だけでなく,相談者を対象とした妊娠転帰調査を行い,エビデンス創出を手がけている
妊娠と薬情報センターでは,添付文書の記載内容と臨床現場の乖離を埋めるための新たな取り組みを開始している
妊娠中の医薬品の使用は母体だけでなく胎児への影響が懸念されるため,十分な注意が必要である。臨床現場においては,迅速に正確な情報が要求されるが,妊娠中の医薬品の使用による児への影響に関する情報については,収集が困難であることに加え,ヒトでの疫学研究が限られていた。そのため,ベースラインリスクの存在などから評価が困難であり,臨床現場において個々が評価を行うのは難しい現状があった。
このような臨床現場での問題を解決するために妊娠と薬情報センター1)が設立された。本稿では,妊娠と薬情報センターの活動について紹介していく。
妊娠と薬情報センターは,厚生労働省の事業として2005年10月に国立成育医療研究センター内に設置された。トロント大学病院のマザーリスクプログラムと正式提携を結び,情報の共有化を図り,最新のエビデンスに基づいた情報提供を行い,臨床現場をサポートしている(図1)。
また,全国に協力病院を設け,ネットワークを通じて相談業務を行っている。同意が得られた相談者に対しては,妊娠転帰調査を行いわが国でのエビデンス創出を手がけている。
妊娠中の薬剤使用に関する相談は,2005年10月~2018年12月時点で,約1万3000件にのぼる。相談時の妊娠状態別では,開設当初の2005~2009年では相談件数全体の72%が妊娠中の相談であったが,2016~2018年では45%が非妊娠での相談であった(図2)。主な相談薬剤をみると,アレルギーや感冒症状などの急性疾患に使用される薬剤は2005~2009年では23%を占めているのに対し,2016~2018年では9%まで低下している。精神疾患やてんかん等慢性疾患に使用される薬剤は2005~2009年では42%,2016~2018年では54%と上昇している(表1)。
この13年間の相談状況から,急性疾患のため妊娠に気がつかず使用した薬剤の相談は減少し,現在では,精神疾患等慢性疾患に使用される薬剤の相談が増えている。これらから妊娠を計画する女性の相談が増加していることがわかる(図3)。
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