【質問者】
髙橋浩一郎 佐賀大学医学部附属病院呼吸器内科講師
【通常の喘息治療を行うが,ドーピングになる薬剤もある】
国際的なアスリートでは,非競技者に比べて高い有病率で喘息が生じることが報告されています。わが国のオリンピック派遣選手団の喘息有病率は,2008年夏季の北京大会では12.4%,2010年冬季のバンクーバー大会では12.9%,2012年夏季のロンドン大会では11.2%と米国などの諸外国と同様に一般成人と比べて高いことがわかっています。特に,クロスカントリースキー,アイススケート,自転車競技,水泳などに多いとされています。発症機序にはアスリート活動に伴う過剰な換気環境が関係しているとされています。
トップアスリートを診療する上で重要なことは,客観的な診断をすることと世界アンチドーピング機構に則ったドーピングコードを遵守することです。多くの薬剤は,通常の診療で使用する投与量においては使用できますが,禁止薬物を治療目的で使用するときには,除外措置(therapeutic use exemptions:TUE)を申請する必要があります。診断およびTUE申請については,日本アンチ・ドーピング機構(Japan Anti-Doping Agency:JADA)の「医師のためのTUE申請ガイドブック 2019」を参照して下さい。このガイドブックはJADAのホームページ1)から閲覧,ダウンロードできます。
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