1 慢性疼痛の特徴,ガイドライン上の漢方の位置づけなど
・痛みの要因別分類:侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心理社会性疼痛
・慢性疼痛治療ガイドラインでは,漢方治療は2C,2D(弱く推奨する)とされている。しかし,慢性疼痛においては,他の薬物治療でも高いエビデンスが少なく,一方,臨床では漢方での著効例の報告がある
・国際疼痛学会(IASP)により,慢性疼痛は7つに分類されている
2 問診項目と処方
東洋医学の疼痛に関する考え方には2つの側面があり,処方はいずれかまたは両方の要素を考慮して構成されている。
(1)消耗性(過労,慢性的な睡眠不足,加齢・病後などによる筋量減少,廃用性変化など身体の機能低下が背景にあるもの)
・問診項目には,腰,膝部の脆弱性(だるさ,立っていると痛い,重い荷物での腰痛の悪化など),加齢に伴う筋量減少,骨粗鬆症,変形などがある
(2)増悪因子の存在(日内変動,気温,湿度,疲労,ストレス,月経,更年期)
・問診項目は,神経障害性疼痛にも関係が深いものが多い。痛みの評価時の着目点として次のようなものが挙げられる
・疲労,睡眠不足で増悪する→(1)消耗性と関連
・痛みに日内変動がある
起床時はさほどでもないが,夕方にかけて増悪する→(1)消耗性と関連
夜間に増悪する→末梢循環不全
・外傷・手術歴がある→末梢循環不全
・寒冷刺激で増悪する。または,湿度上昇で増悪する
・精神的負荷による増悪,痛みへの固執傾向がある。または,月経周期と関係する
3 代表的な鎮痛の主な漢方薬と使用目標
4 処方例
疼痛疾患の漢方処方の中でも,慢性腰痛に対する牛車腎気丸,神経障害性疼痛に対する抑肝散,有痛性脚痙攣に対する芍薬甘草湯,舌痛症に対する加味逍遙散,帯状疱疹後神経痛に対する桂枝加朮附湯および附子末など代表的なものがある。
日本東洋医学会EBM委員会による「漢方治療エビデンスレポート2016」を参照。[http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/index.html]