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ポルフィリン症[私の治療]

No.5024 (2020年08月08日発行) P.43

新宅治夫 (大阪市立大学医学部発達小児医学分野特任教授)

登録日: 2020-08-09

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  • ポルフィリン症は,ヘム合成に関与する酵素群をコードする遺伝子の変異,あるいはそれに後天的障害が加わることにより,酵素活性が低下し種々の病態を生じる,遺伝性代謝性疾患である。ポルフィリン体あるいはその前駆体が皮膚,血液,肝臓その他の臓器に蓄積して生じる複数の病気の総称であるが,主として肝性と骨髄性(赤芽球性)とに分類される。肝性ポルフィリン症には急性間欠性ポルフィリン症(AIP),ALAD欠損性ポルフィリン症(ADP),異型ポルフィリン症(VP),遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)および晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)の5病型が,骨髄性ポルフィリン症には先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP),赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)の2病型が含まれる。さらに両方の組織でポルフィリンの過剰産生がみられるものとして,肝・骨髄性ポルフィリン症(HEP)がある。また,臨床的にはポルフィリンの前駆体の蓄積による急性神経症状を主とする急性ポルフィリン症と,皮膚へのポルフィリンの蓄積による皮膚光線過敏症を主とする皮膚型ポルフィリン症に分類される。

    ▶診断のポイント1)

    急性ポルフィリン症は,思春期~妊娠可能な中年の女性に多く,繰り返す原因不明の腹痛や嘔吐などの消化器症状,筋肉痛,四肢脱力などの神経症状,不安,不眠などの精神症状が認められる。これらの三大症状が認められ,同様の家族歴があり,褐色調尿がみられる場合,尿中ポルフィリノーゲン(PBG)を定性し,陽性であれば急性ポルフィリン症と診断する。

    皮膚型ポルフィリン症は幼児期~思春期に多く,皮膚の光線過敏を主徴とし肝障害を伴うことが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ポルフィリン症に対する治療は,誘発因子の回避や対症療法が基本で,根本的治療法はない。急性ポルフィリン症では,大量の点滴,ブドウ糖の投与を行い,疼痛やしびれ,悪心・嘔吐などにはクロルプロマジンを,高血圧や頻脈にはβ遮断薬(プロプラノロールなど)を投与する。誘発因子となる禁忌薬剤の使用は避ける。ヘマチンやヘムアルギニン(ヘミン)などのヘム製剤の静脈内投与が,臨床症状とポルフィリン代謝の改善に有効である。また,シメチジンには肝5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)活性抑制作用があり,代謝異常の是正も含めて有効である。重症の場合は血漿交換が適応となる。

    皮膚型ポルフィリン症については遮光とともに,外傷を起こさないように注意する。CEP,EPPでは光曝露による急性症状を起こしやすく,遮光を常に心がける。PCTではアルコール歴などの誘因に注意する。

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