適切な治療が行えているかを医療者は再確認するとともに,並行して患者の抱える苦痛を評価し,患者の価値観をふまえた方針決定を行っていく。そのような考え方に基づく緩和ケアは心不全のみならず多くの疾患へ提供されうるものである。本稿では以下に示した部分について述べていきたい。
1. 心不全のステージ分類
①心不全は進行性の疾患であり,ステージを意識した治療が重要である。
②ステージA, Bは無症候の段階,ステージCは症状出現から有症候期,ステージDは末期の段階に相当する。
2. 緩和ケアとは何か?
①緩和ケアは疾病により生じる苦痛を早期に見出し,QOLを向上させるアプローチである。
②疾患は限定されず,提供時期も終末期に限定したものではない。
3. 心不全治療と緩和ケア
①心不全は治療行為が症状緩和に通じる。
②通常治療で残存する苦痛への介入をすることが緩和ケアであり,決して特別な行為ではない。
4. ステージ別の緩和ケア
①ステージA, Bでは疾病理解と進行予防に努める。
②ステージCでは,心不全の経過を自分事としてとらえてもらえるよう支援し,苦痛があれば介入する。
③ステージDでは,治療経過を確認し,必要に応じて苦痛への介入を行う。
5. 緩和ケアにおける意思決定支援
①患者の価値観をふまえた意思決定支援を行う。
②決定の主体は患者である。
③患者に発言してもらうことは有用である。