消化性潰瘍は,酸,ペプシンにより消化管壁の欠損を生じる病態で,部位としては胃と十二指腸球部が大多数を占める。Helicobacter pyloriと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が2大リスクファクターである。わが国のH. pylori陰性,NSAIDs陰性の特発性潰瘍は,2000~2003年には約1~4%であったが,2012~2013年には12%に増加している。現在では,胃潰瘍は70歳代,十二指腸潰瘍は60歳代に多い。
上部消化管内視鏡検査で診断する。胃潰瘍は,潰瘍型胃癌や悪性リンパ腫との鑑別を要する。
合併症ありの場合,その対応をまず行う。その後は,薬剤による通常の潰瘍治療を行う1)。
H. pylori起因性潰瘍では,H. pylori除菌治療を行う。開放性胃潰瘍で大きいものでは,除菌治療後に酸分泌抑制薬の追加投与を行う。開放性十二指腸潰瘍では酸分泌抑制薬の追加投与は必須とは言えないが,除菌不成功の場合もありうるため,追加投与を行う。
H. pylori除菌適応のない場合(抗菌薬アレルギー,重い肝・腎障害など)は,非除菌治療をプロトンポンプ阻害薬(PPI)ないしカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)で行い,潰瘍が瘢痕化した後に,再発予防のためにH2受容体拮抗薬(H2RA)で維持療法を行う。
NSAIDs潰瘍では,可能ならNSAIDsを中止する。中止が不可能ならば,PPIで治療する。低用量アスピリン(LDA)潰瘍では,LDAを中止せずPPIで治療する。
特発性潰瘍では,PPIによる初期治療を行い,維持療法をPPIまたはH2RAで行う。
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