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家族志向のケア[2]─ヘルスエキスパートと真の顧客[プライマリ・ケアの理論と実践(77)]

No.5034 (2020年10月17日発行) P.12

西水翔子 (大分大学医学部総合診療・総合内科学講座)

藤谷直明 (大分大学医学部附属病院総合内科・総合診療科/宮崎医院副院長)

登録日: 2020-10-15

最終更新日: 2020-10-14

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SUMMARY
家族内には,家族の健康問題や受療行動に影響を与えているヘルスエキスパートがいる。ヘルスエキスパートを意識することで,受診理由が明確になる,治療が円滑に進むなど効率のよい診療ができる。

KEYWORD
ヘルスエキスパート
家族の中で健康問題や病気に関するリーダーのこと。伝統的には年長の女性が担当するが,医療関係者が家族にいる場合はその人が役割を担うことが多い。

西水翔子1) 藤谷直明2) (1大分大学医学部総合診療・総合内科学講座 2大分大学医学部附属病院総合内科・総合診療科/宮崎医院副院長)

PROFILE
初期研修修了後,大分大学医学部総合診療・総合内科学講座で総合診療専門医後期研修を開始。地域で頼りになる総合診療医になるため日々奮闘中です。

POLICY・座右の銘
為せば成る

1 ケース(図1)

CASE:81歳男性,COPD,喫煙歴あり

今までは一人で定期受診できるほどしっかりしていたが,最近,「薬は飲んでいるが,吸入薬はたくさん家に余っているからいらない」と残薬調整を希望することが続いており,予約日を間違えることも増えていた。

その日は「咳と痰が出ているので何か薬が欲しい」と予約外で受診した。問診・診察ともに特に悪化した様子もなく,本人もけろっとしており,なぜ受診したかはっきりしなかった。
経過観察をしようかと悩んでいたところ,看護師が患者に「そういえば,先ほど一緒に来ていた娘さんはどうしたの?」と声をかけた。患者は「ここまで連れて来てくれて買い物に行った。娘が病院に行け,とうるさかったから受診した」と答えた。

これは娘が何か知っていると思い,電話をかけた。娘曰く「約2週間前から痰絡みの咳が続いていて,昨晩には血痰が出ていた。肺癌などの可能性があるのではないかと思い,受診させた」という話であった。

胸部X線検査を施行したが,以前と比較して変わりはなかった。買い物が終わった娘が病院に戻ってきたため,本人と一緒に検査結果を説明し,娘は安心したようであった。今回のエピソードを含めて,最近は認知機能低下が疑われる行動もあるため,今後は娘と一緒に受診するようにしてもらった。

その後は娘の定期受診と合わせて受診するようになり,自宅での様子も確認できるようになった。また娘の協力のもとで吸入薬などのアドヒアランスも改善した。

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