不安定狭心症は,安定狭心症に対応する呼称の疾患である。放置すると急性心筋梗塞,心臓突然死への移行リスクが高い疾患群であるが,その病因,病態,重症度は一律ではなく多岐にわたる。このため,Braunwaldの分類1)に基づいて重症度を評価し,治療方針を決定することが推奨されてきたが,あまりに複雑であることから実際的ではなく,近年は非ST上昇急性冠症候群の一部として包括的にとらえて急性期は管理され,トロポニンTの上昇があれば非ST上昇型心筋梗塞,トロポニンTの上昇がなければ不安定狭心症と分類される。
狭心症の不安定性を示唆する胸部症状としては,①最近の発症,②1日に何回も出現する発作,③軽労作で発作が生じるように増悪した発作,④48時間以内の20分以上持続する安静時発作,などが挙げられる。心筋梗塞後2週間以内の狭心症発作も,不安定であることを示唆する。そのほか,虚血に合併した肺水腫,Ⅲ音またはラ音を伴う狭心症,低血圧を伴う狭心症も予後不良のサインである1)。
STの高度下降,広範なST下降,ST下降の遷延は重症を示唆する。陰性T波を認める例の予後は一般的に良好であるが,陰性T波が広範囲に及ぶ(6誘導以上で)例の予後は不良である。
トロポニンT上昇の有無を確認する。不安定狭心症では,前述のごとくトロポニンTの上昇を認めないが,急性炎症反応の指標であるCRPが上昇している場合は,無症状であっても不安定性が持続している,または再発しやすいことを示す可能性がある。
治療の目的は心筋虚血を改善し,心筋梗塞への移行および突然死などの心事故防止にある。重症例においては薬物療法で管理するよりも,血行再建を行ったほうが予後は良好であることがわかっている。このため,可及的速やかに血行再建が可能な専門施設へ紹介することが原則である。薬物療法抵抗性の症例,中等度,高リスク例に対しては,24時間以内に血行再建を前提とした冠動脈造影を行い,適応があれば冠動脈形成術(PCI)を実施する(早期侵襲的治療戦略)。低リスク例は外来での経過観察が可能であるが,外来では必ず虚血心疾患の長期予後リスクを評価すべきである。また,不安定狭心症の短期リスクの評価は,一時点のみでは不十分であり,増悪時には直ちに血行再建を考慮すべきである。
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