1 カーボカウントのメリットと注意点
・カーボカウントとは,食事中の炭水化物に注目した糖尿病の食事療法のことである。
・インスリン投与量の調節とも連動している点が,従来の食事療法と大きく異なる。
・インスリン投与量の調節を連動させることで,より良好な血糖コントロールの実現と,「糖尿病食」に縛られない食生活という生活の質(QOL)の向上を,同時に達成することが可能。
・肥満を合併した糖尿病患者の場合,炭水化物量とは別に摂取エネルギーを管理する必要がある。
・カーボカウントは低炭水化物ダイエットではない。
・カーボカウントは大規模臨床研究であるDCCT研究で用いられて注目された。
・DAFNE研究において,カーボカウントの系統的な教育はHbA1cを改善することが立証された。
2 カーボカウントの実践
・基礎カーボカウントとは,炭水化物を含む食品を同定し,一定量を摂取することで食後高血糖を予防する方法。
・炭水化物量の見積もり
(1)栄養成分表示を読み取る方法がもっとも容易な方法である。
(2)典型的な食品については,1カーボ(炭水化物15gまたは10g)を用いて炭水化物量を見積もる場合もある。
(3)栄養成分表示がない食品の場合は,食品の重さを計量し,食品成分表の該当項目を参照して積算する。
・応用カーボカウントとは,摂取する炭水化物の量に合わせて,超速効型インスリンの投与量を調節する方法。
・炭水化物を摂取するタイミングに合わせて超速効型インスリンを注射することが重要。
・糖質/インスリン比の算出と活用
(1)糖質/インスリン比とは,1単位のインスリンで処理できる炭水化物の量(g)。
(2)食品中の炭水化物量を積算し,糖質/インスリン比で割ると,必要なインスリンの単位数が得られる。
・インスリン効果値の算出と活用
(1)インスリン効果値(insulin sensitive factor)とは,1単位のインスリンで下がる血糖値の幅のことである。
(2)1800ルール(または1700ルール)により概算される。
(3)インスリン効果値は,意図した以上に血糖値が高い場合に補正インスリンを追加するときの計算に用いる。
・残存インスリン
(1)超速効型インスリンの場合,4時間から6時間程度,血糖降下作用が持続しており,これを残存インスリンと呼ぶ。
(2)残存インスリンが残っている状態で次の超速効型インスリンを投与すると,低血糖を起こしやすくなるので,注意が必要である。
・インスリンポンプ・CGMとカーボカウント
(1)インスリンポンプにはボーラス計算機の機能が備わっており,摂取する炭水化物の量と現在の血糖値を入力すると,自動的に投与すべきインスリンの量を計算することができる。
(2)持続血糖測定器(CGM)を用いると,TIR,TAR,およびTBRがわかり,糖質/インスリン比およびインスリン効果値の調節に役立つ。
・脂質およびタンパク質の影響
脂質およびタンパク質の摂取量が多い場合は,インスリン投与量と投与時間の調節が必要になることがある。
・遠隔栄養指導の健康保険適用
2020年4月より,外来通院中の患者に遠隔栄養指導を行った場合も,健康保険が適用されるようになった。