日本医療機能評価機構は5月17日に公表した「医療安全情報」(No.174)で、インスリン投与後の経腸栄養剤のルートの未接続や開始忘れなどによって患者が低血糖に陥った医療事故事例を取り上げ、注意を喚起した。
機構によると、こうした事例は2017年1月から21年3月末までの間に6件報告されている。今回の医療安全情報では、そのうち2件の詳細を紹介した。1件目の事例では、看護師がインスリン製剤の「ノボラピッド注22単位」の皮下注射後に経腸栄養剤の滴下を開始。1時間半後にシーツに経腸栄養剤が漏れていることに気づき、接続部を確認したところ、経腸栄養剤のルートが経鼻栄養チューブに接続されていなかった。患者は血糖値が低下しており、20%ブドウ糖液を投与した。
もう1件の事例では、血糖測定と、「ノボラピッド注10単位」の皮下注射を看護師2人が分担。血糖測定を担当した看護師が皮下注射後に行うべき経腸栄養剤の注入を忘れた。3時間後の主治医回診時には患者の意識レベルが低下していたため、血液検査やCT検査を行った結果、経腸栄養剤の注入し忘れが引き起こした低血糖であることが判明。20%ブドウ糖液と経腸栄養剤が投与された。
事例が発生した医療機関では再発防止策として、▶経腸栄養剤のルートを経鼻栄養チューブなどに接続したことを確認後に滴下を開始する、▶各患者へのインスリンと経腸栄養剤の投与について看護師間で情報共有する―取組みが行われているという。