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胸膜炎[私の治療]

No.5067 (2021年06月05日発行) P.36

原田英治 (九州大学大学院医学研究院胸部疾患研究施設)

登録日: 2021-06-03

最終更新日: 2021-06-01

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  • 種々の原因によって起こる胸膜の炎症を「胸膜炎」と呼ぶ。主な原因として感染症,悪性腫瘍,膠原病,薬剤性,肺梗塞などがあり,多くは滲出性の胸水を伴う。漏出性胸水を伴う心不全,腎不全,肝硬変,低蛋白血症などとは区別する。

    ▶診断のポイント

    胸膜の炎症による胸痛や胸水貯留による呼吸困難などを認める。感染症であれば,咳,痰,発熱などの症状を伴うことが多い。関節痛や皮疹などの所見があれば膠原病を疑う。
    胸水貯留部位での聴診所見として,肺胞呼吸音の低下または消失,胸膜摩擦音の聴取,打診で濁音を認める。
    血液検査では白血球増多,核の左方移動,CRPの上昇などの炎症反応を認めることが多い。

    胸部X線では肋骨横隔膜角が鈍化し,大量胸水であれば縦隔が健側に偏位する。少量の胸水の場合,立位正面像ではわかりにくいことがあり,患側を下にした側臥位正面(デクビタス)撮影を行うことで認めやすくなる。また,胸部CTと併せ,肺内や胸膜に原因となる病変がないかどうか検索する。大量の胸水貯留であれば虚脱した肺内に病巣が隠れていることもあるため,胸水を排液し肺の膨脹が得られた後に,必ず画像の再確認を行う。膵炎,横隔膜下膿瘍,肝膿瘍など腹部の炎症からの波及,他臓器の悪性腫瘍からの胸膜播種のこともあるため,肺に明らかな病変がない際は注意が必要である。

    浮腫や体重増加,画像で両側胸水,心拡大などの所見を認めたら,漏出性胸水の可能性が高い。

    胸水の性状と原因の検索のため胸水穿刺を行うが,肺炎に付随した少量の胸水であれば抗菌薬投与で改善することも多く,経過をみることもある。胸水検査で,①胸水LDH値/血清LDH値>0.6,②胸水LDH値/血清LDHの正常上限値>2/3,③胸水蛋白値/血清蛋白値>0.5,以上の3項目のうち1つでも満たせば滲出性胸水と診断する(Lightの基準)。胸水中の糖の低下(一般的に60mg/dL以下),または胸水糖値/血清糖値0.5以下の所見があれば,感染(特に後述の膿胸),関節リウマチ,悪性腫瘍などが疑われる。胸水のグラム染色,抗酸菌染色,細菌・抗酸菌培養,結核菌PCRなどの検査を行い,起炎菌の検出に努める。また,pHの測定,細胞診検査で細胞分画や悪性細胞の有無を確認する。細胞分画で好中球優位であれば細菌感染,リンパ球優位であれば結核,悪性腫瘍,膠原病,好酸球優位であれば寄生虫感染,薬剤性などをまず疑う。一般的に,胸水中のADA(adenosine deaminase)値が40U/L以上であれば結核性胸膜炎が疑われるが,膿胸などでも上昇しうるため,細胞分画や培養検査を参考にする。

    胸水検査で確定診断がつかない場合は,胸腔鏡下の胸膜生検を検討する。生検を行ったら病理検査だけでなく細菌・抗酸菌培養も行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    感染による胸膜炎であれば,抗菌薬の投与を開始し,胸腔ドレナージを検討する。細菌性の場合,多くは肺炎からの波及であり,肺炎に準じて治療を行う。一般的なドレナージの適応は①胸水pH<7.2,②膿性,③大量胸水であり,以上に該当しなければ抗菌薬投与で経過をみる。

    がん性胸膜炎では胸腔ドレナージを行い,胸膜癒着術を検討するが,がん腫によっては化学療法で経過をみることもある。
    膠原病では原疾患の治療を優先する。

    薬剤性ではまず被疑薬を中止し,改善しなければステロイドの投与を検討する。

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