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気管支拡張症[私の治療]

No.5239 (2024年09月21日発行) P.43

長谷川直樹 (慶應義塾大学医学部感染症学教室教授)

登録日: 2024-09-24

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  • 気管支拡張は様々な原因によって生じるが,主として好中球性の慢性気道炎症の結果,気道のクリアランス機能が低下し,気道壁の平滑筋や軟骨などの支持組織の破壊が進行して,気道内径の拡張を呈する病態である。咳嗽,喀痰などの呼吸器症状を伴う1)

    ▶診断のポイント

    咳,喀痰,増悪の既往の3項目のうち2項目が存在し,高分解能胸部CT(high-resolution CT:HRCT)で気管支拡張所見(1つ以上の区域で気管支と伴走する肺動脈の横断像において,肺動脈の径よりも気管支の内径が大きい)を認める場合に診断される2)。原因により,気管支拡張を両側の肺の複数領域に認めるびまん性,肺の1~2領域に限られる限局性のこともある。ここで増悪とは,「主要な症状(①咳嗽,②喀痰量および/または濃度,③喀痰の膿性,④呼吸困難および/または運動耐容能の低下,⑤疲労感および/または倦怠感,⑥喀血)のうち3つ以上の増悪が48時間以上持続し,治療の変更が必要な状態」として定義される臨床症状の変化であり3),増悪を繰り返しながらしだいに進行する。

    急性気管支炎,慢性気管支炎,慢性肺気腫,気管支喘息などの急性・慢性呼吸器疾患に本疾患の定義を満たす例が多数潜在している可能性がある。本疾患の病態には慢性下気道感染が関連することが多いが,増悪の場合には,ウイルス性,細菌性を含め様々な気道感染の関与も示唆される。進行すると呼吸不全に至る。気道炎症に伴い気道壁に新生血管が増えるため,これらの血管の破綻により血痰,喀血に至る場合がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    原因が判明している場合には,その治療は必須である。拡張した気道病変を元に戻すことは不可能であり,治療は症状のコントロール,増悪頻度の低減により,呼吸機能低下の抑制,QOLの改善を図ることである。画像上明らかな気管支拡張症を認めても喀痰の乏しい場合もあるが,喀痰を認める場合には,排痰促進による気道のクリアランスが重要になる。そのためには理学療法,薬物療法が重要であり,理学療法科との連携が重要である。

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