糖代謝異常合併妊娠は,①妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM),②妊娠中の明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy),③糖尿病合併妊娠(pregestational diabetes mellitus)に分類される。妊娠初期の血糖コントロールと胎児形態異常の関連が指摘されている。糖代謝異常合併妊娠は,巨大児,子宮内胎児死亡,肩甲難産,羊水過多,児の呼吸窮迫症候群の頻度が増加するハイリスク妊娠であり,妊娠中の厳密な血糖コントロールが必要である。
妊娠前に既に糖尿病と診断されている,あるいは確実な糖尿病網膜症がある場合には,上記③の糖尿病合併妊娠と診断される。妊娠中の耐糖能スクリーニングは,妊娠初期および中期に,全妊婦を対象に行われる。妊娠初期に,(1)空腹時血糖≧126mg/dLあるいは(2)HbA1c≧6.5%の場合は,妊娠中の明らかな糖尿病と診断される。それ以外のスクリーニング陽性妊婦を対象に75g糖負荷試験を行い,(1)空腹時血糖≧92mg/dL,(2)1時間値≧180mg/dL,(3)2時間値≧153mg/dL,のいずれか1点でも陽性であった場合,①の妊娠糖尿病(GDM)と診断される。
糖代謝異常合併妊娠の管理は,まず食事療法・運動療法を行い,目標血糖値を達成できない場合にはインスリン療法を行う。妊娠中は,非妊娠時とは異なり,厳密な血糖コントロールを目標とするため,毎食前および2時間後の血糖自己測定(SMBG)を行うことが望ましい。目標血糖値は,食前血糖値≦100mg/dL,食後2時間血糖値≦120mg/dLとすることが多い。
糖代謝異常合併妊娠に対する食事療法は,糖尿病専門医および管理栄養士の指導のもと,妊婦の体重(肥満度)と妊娠週数に応じて必要なエネルギー量をバランスよく摂取する。妊娠中は,胎児へのエネルギー供給が必要なだけでなく,母体もケトアシドーシスになりやすいため,過度なエネルギー制限・糖質制限は避ける。高血糖を予防し,血糖の変動を少なくするために分割食(4~6回)が有効である。妊娠中の適度な運動は体重管理にも有効であるが,糖代謝異常合併妊娠に対してどの程度の負荷が必要かは明らかでない。過度な運動は切迫流産・早産のリスクを高める恐れもあるため,産科主治医とよく相談してから行うほうがよい。
妊娠中は,原則として血糖降下薬は使用できないため,食事療法・運動療法で血糖コントロール不良の場合にはインスリンを導入する。SMBGを行いながら,超速効型および持効型インスリンを用いた強化インスリン療法を行うことが多い。
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