偽性副甲状腺機能低下症(PHP)は,副甲状腺ホルモン(PTH)不応性に基づくPTH作用障害が主病態である。症状は,低カルシウム血症による口周囲や手足などのしびれ,錯感覚,テタニー,全身痙攣などである。大部分の症例の病因は,PTH受容機構に共役するGsα蛋白の活性低下(ゲノム変異あるいはエピゲノム変異による)である。Gsα蛋白を共役因子とするほかのホルモン/サイトカイン受容機構の障害により,多種ホルモン不応症を合併する。甲状腺刺激ホルモン(TSH)不応性による原発性甲状腺機能低下症,黄体形成ホルモン不応性による性腺機能障害,月経異常,成長ホルモン放出ホルモン不応性による成長ホルモン分泌不全である。
約半数程度にオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(AHO)と呼ばれる特徴的な身体症候を合併する。主な症候は,皮下あるいは軟部組織の異所性骨化,短指(趾)症,円形顔貌,低身長,肥満,歯牙低形成である。精神発達遅滞を伴うこともある。AHOを合併するものを1a型とし,合併しないものを1b型と分類する。
低カルシウム高リン酸血症にPTH高値を伴う場合は本症を疑い,腎機能低下,低マグネシウム血症,ビタミンD欠乏症を除外診断する。診断に迷う場合は,Ellsworth-Howard試験によって,サイクリックAMP(cAMP)の反応性(PHPでは低下)を確認する。活性型ビタミンD製剤投与中や低カルシウム血症の是正後でも,cAMP反応の判定は可能である。ビタミンD欠乏症との鑑別が困難で治療を急がないような症例では,天然ビタミンDの補充(現在,処方箋薬剤としての販売はないため,サプリメントとして市販されているものを用いる)を行って,血清カルシウム(Ca),PTH,ALPの変化を確認するのも1つの方法である。
先天性甲状腺機能低下症の新生児マススクリーニングで,新生児期に高TSH血症(多くは潜在性甲状腺機能低下症のレベル)をきっかけに診断されることも増えているが,PTH不応性は新生児期~1歳以前にはみられないことが多い。
残り1,839文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する