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(1)経口糖尿病薬多剤無効例のケース [特集:よくあるケースで学ぶ2型糖尿病のインスリン外来導入時の注意点]

No.4815 (2016年08月06日発行) P.26

澤木秀明 (有澤総合病院糖尿病センターセンター長)

登録日: 2016-09-16

最終更新日: 2017-01-20

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  • 低血糖症状は多彩である。特に高齢者においては非定型的な訴えとなることが少なくない点に留意する必要がある

    治療法を見直すときには,薬物療法のみならず,食事療法,運動療法にも配慮する

    SU薬を内服しているときは,用量によっては減量してから,インスリンの外来導入を行う

    持効型インスリン製剤から開始し,目標の血糖コントロールに未達の場合は,超速効型インスリン製剤の追加を検討する

    1. 経口糖尿病薬が無効であった2型糖尿病の症例

    70歳代,女性,糖尿病歴10年。2型糖尿病,高血圧,変形性膝関節症で他院に通院し,グリメピリド3mg,メトホルミン750mg,シタグリプチン100mgが処方されていた。HbA1cの推移は4月7.6%,5月7.8%,6月7.7%,7月7.5%であった。7月の受診時,グリメピリドを自己判断にて中止していることが明らかになった。グリメピリドを内服すると疲れやすく,倦怠感を自覚したためだという。
    8月はHbA1c 8.6%,随時血糖値351mg/dLと悪化した。同月,SGLT2阻害薬のルセオグリフロジン2.5mgが開始となったが,9月はHbA1c 9.0%,随時血糖値367mg/dLと悪化し,当科紹介となった。
    身長156cm,体重71.3kg,BMI 29.3kg/m2(標準体重53.5kg)で肥満を認めた。抗GAD抗体陰性,空腹時血中C-peptide 1.8ng/mLで内因性インスリン分泌は保たれており,2型糖尿病と診断した。糖尿病網膜症なし。尿アルブミン4.2mg/g・Cr,尿ケトン体陰性。トレッドミル運動負荷心電図陰性。
    外来受診時,インスリン注射開始の同意が得られたため,インスリン デグルデク4単位朝食前から開始した。2週間後の受診時の空腹時血糖値が202mg/dLであったため,インスリン デグルデクを6単位に増量した。10月はHbA1c 9.1%,血糖値182mg/dLで,血糖測定を1日1回から開始した。HbA1cは11月8.7%,12月8.3%,1月7.8%となった。たまに測る食後血糖値は,朝食後2時間値は200mg/dL前半,昼食後と夕食後2時間値は200mg/dLを超えることがほとんどなかった。本人と相談の上,超速効型インスリン製剤である,インスリン リスプロ4単位朝食直前を開始した。2月にはHbA1cは6.9%,朝食後の血糖値は200mg/dLをほとんど超過しなかった。

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