中央社会保険医療協議会総会は8月25日、在宅医療と入院医療について、初回の議論を行なった。在宅医療では、2018年度改定時に創設された「在宅時医学総合管理料(在医総管)」の「継続診療加算」の普及が進んでいないことに多くの委員が問題意識を表明。24時間の往診体制の構築が算定の障壁となっていることから、診療側は要件の見直しを提案したが、支払側からは安易に要件を緩和するべきではないという慎重論も出た。
厚生労働省が示したデータによると、近年、「在宅療養支援診療所(在支診)」の届出施設数は、ほぼ横ばいで推移しており、診療所が届出を行わない理由で最も多いのが、「24時間の往診担当医の確保」が難しいため。こうした現状を踏まえ、18年度診療報酬改定では、「在医総管」などの加算として「継続診療加算」を創設。在支診以外の診療所がかかりつけの患者に対し、他の医療機関との連携などにより24時間の往診体制と連絡体制を整えることを新たに評価した。
しかしながら、「在医総管」の算定回数(在支診、在宅療養支援病院以外の診療所)に対する「継続診療加算」の算定回数の比率は、約7.7%にすぎず、算定していない理由では、「24時間の連絡・往診体制構築に向けた協力医療機関が確保できない」が最多となっている。
診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、同加算の算定促進に向けた打開策として、24時間の往診体制を求める現行要件を、後方支援病床の確保や初期救急との連携などに改めることなどを提案。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、医療依存度が高い患者の夜間・週末の対応について、「在支病(在宅療養支援病院)からの訪問診療とかかりつけ医の連携による取組をさらに進めることも一つの手ではないか」と述べた。
支払側の意見も、在宅医療の推進が急務との点では一致しているものの、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「量の確保を重視するあまり、安易な要件緩和や新たな報酬を検討するのではなく、質の確保を前提にかかりつけ医中心の在宅医療を整備していくべきだ」と診療側の提案に否定的見解を示した。
訪問看護では、特定行為研修修了看護師など、専門性の高い看護師の評価が論点になった。訪問看護ステーションでは、緩和ケアや褥瘡ケアなどの専門研修を受けた看護師による同行訪問の件数が増加傾向にあり、特定行為研修修了看護師の約4.5%が訪問看護ステーションに就労しているという。
診療側の池端委員は、高齢者の増加や地域医療構想の推進で、医療依存度の高い患者に対する訪問看護のニーズはいっそう高まると指摘。訪問看護ステーションにおける特定行為研修修了看護師配置の動機づけとなる評価のあり方を検討するよう促した。一方、吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)は、「病院に所属する専門性の高い看護師も地域の看護師という視点が重要だ。病院の看護師が地域に出ていくことに対する制度上の工夫が必要ではないか」と述べた。