肺に発生する良性腫瘍は,肺癌に比べて頻度は稀で,肺腫瘍の2~5%を占めるにすぎない。胸部X線写真やCTで肺野末梢の孤立性陰影として,偶然発見されることが多い。多くは無症状で,早期の肺癌や炎症性疾患との鑑別が問題となる。稀に気管・主気管支に隆起性病変をきたし,気道狭窄症状で発見される場合もある。
過誤腫の頻度が50~70%を占め,硬化性肺胞上皮腫(硬化性血管腫),乳頭腫などが続く。
無症状で発見された場合,診断と治療の目標は,根治可能な早期肺癌ではないことを証明することである。肺癌や他臓器癌の肺転移との鑑別は,必ずしも容易ではなく,組織診断が必要となる場合も多い。
まず,過去の胸部X線写真,CTなどを収集することが大切である。2年,3年とさかのぼれると,実は以前から腫瘤影があったという場合もあり,大きさが変わらない場合は,経過観察することが可能である。一方,良性腫瘍でも,過誤腫などはゆっくり増大し,気道に影響を及ぼして咳嗽などの症状をきたす場合もあるので,症状があれば,より侵襲的な検査で組織診断を得て治療を検討することとなる。
過去の画像が入手できない場合,CTなどでの画像診断で,良性・悪性の判断を行う。良性の所見には,境界が明瞭,類円形,孤立性陰影,中に石灰化を伴う,などがある。もし,悪性を疑う所見(周辺組織への浸潤,引きつれ,血管・気管支の収束像)などがあれば,積極的に組織診断へ進む。
残り1,043文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する