慢性甲状腺炎は,典型的にはびまん性甲状腺腫と抗サイログロブリン抗体(TgAb),抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が陽性になる中年女性に多い病気である。甲状腺機能低下症になるのは潜在性甲状腺機能低下症を含めて約3割で,多くは甲状腺機能正常である。
慢性甲状腺炎は組織学的にリンパ球浸潤,リンパ濾胞の形成,間質の線維化,上皮細胞の好酸性変成によって診断される。組織による診断が現実には困難なので,バセドウ病を否定した上でTgAbまたはTPOAbの陽性で診断される。TgAb,TPOAbとも陰性の場合もあり,この場合は細胞診が必要となる。
慢性甲状腺炎での甲状腺機能は変動しやすい。ヨウ素の過剰摂取では甲状腺機能低下症,無痛性甲状腺炎を発症することがあるので,昆布類の多食は制限し,ヨウ素含有鎮咳薬などヨウ素を大量に含む薬を使用している場合は,可能であれば他剤への変更を勧める。この処置で1~2カ月後に甲状腺機能低下症が改善しなければ,チラーヂン®S(レボチロキシンナトリウム水和物)の投与を開始する。
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